01.おはようから全力

アラームって、一度じゃ起きれないと思うんだ。特に私は二度寝が好きだから、というか起きたあとのあと五分が好きで、二度に留まらず三度四度と寝てしまうんだけど。

まあ、何が言いたいかって言うと、私苗字名前は今日優雅に六度寝をして今遅刻ぎりぎりです。

「あぁ〜!いっくん〜、私のアラーム鳴ってた?」

「うん、十回は鳴ってたけど、全部姉さんが止めてたよ。」

そんなあぁ〜!なんて言いながらおばぁちゃんが用意してくれた朝ごはんを食べ始める。
白米に鮭の塩焼き、ほうれん草の煮浸しに大豆のひじき煮、味噌汁はさつまいもと厚揚げが入っている。

「僕もう行くけど、ご飯はよく噛んで飲み込んでね。あと、家出る時は鍵閉めてね。」

一個歳下の弟は、おばぁちゃん特製のお弁当をカバンに入れて、私に声をかけてくれる。

おじぃちゃんとおばぁちゃんは日課の朝の散歩に出たのか、弟が登校すればこの家に私一人になる。

このままでは、確実に遅刻する。しかも一限にギリ間に合わない。今日の一限は数学。昨日予習した限りでは特に質問点などはなかったので、ぶっちゃけ授業に出る必要は無いと思ってしまう。

休んじゃうか。

「っ、びっくりしたー、」

いつもの悪い思考が出た直後。食卓に伏せて置いていたスマホが震えた。

『一限間に合ったら駅前のパフェ奢ってやる』

クラスメイトからの素っ気ないLINEだった。

なんて事だ。駅前のパフェと言ったら、今うちの学校で話題になっているやつだ。クラスの女子がはしゃいでいるのを聞いて、行きたいと駄々をこねたのは二日前の事だし、なんならそれからずっと語尾が駅前のパフェ食べたい。になっている。それくらい食べたい。

「…許せ、泉。」

先程の弟の気遣いを無視してしまうことへの罪悪感を少しでも緩和するために、謝罪を声にして朝食を口にかき込んだ。

走ればギリ間に合う。多分。

制服にすぐ着替えて、カバンをつかんで家を出た。ちゃんと鍵も閉めた。偉いぞ、私。


「ぎりぎりだな、名前。」

ニヤニヤと揶揄うように笑ってそう言ったのは、クラスメイトの出水公平だ。

色素の薄い髪色にツリ目がちな三白眼。真ん中で分けた髪は狙ったかのように両目にかかっている。いや、目に入ってる。Mか?

私にLINEをしたのはこいつだ。
相も変わらず楽しそうに笑って見下す出水に確認をとる。

「ちゃんと奢ってくれるんだよね?駅前のパフェ。食べたい!」

言い切った所で数学教師が教室に入ってきて、質問の返事は聞けなかった。

朝から全力で走ったせいで脱力感が凄まじい。しっかりとした朝食をとったのも相まって、睡魔が襲ってくる。折角登校したからには授業はきちんと受けたい。しかし、この眠気に抗うことは容易ではない。うん。

私はよくやったよ。

そう自分に言い聞かせ、左手で頬杖を着いて目元が前髪で隠れるように俯き、右手で筆記用具を握ったまま目を瞑った。

このままならすぐに眠れるだろう。

あと二秒で意識が沈むと思った時、スカートのポケットに入れていたスマホが震えた。

突然の振動に落ちかけた意識は中途半端に覚醒した。教師にバレないようにスマホを取り出し、通知を確認する。

『パフェ食いたいならちゃんと授業受けろよ』

出水からのLINEだった。

あいつは後ろにも目が着いているのだろうか。私の席は出水の後方なので、振り返らなければ見えないだろうに。何となく出水の方に目をやれば涼しい顔で授業を受けている。

『そんでムズいとこ後で教えて』

随分と勝手な事を言ってくれる。

そう思うのだが、言うことを聞いて授業を真面目に受けてしまう私は出水に甘いのかもしれない。

いや、ただ駅前のパフェが食べたいだけかも。