弱肉強食3.5
 

「舌、だして」

明かりもついていない風紀室の奥にある委員長室の、さらにその奥にある指導室で銀糸を引くのは期待に胸を高鳴らせる卯崎とこの部屋の主の鷲波だ。

パイプ椅子に腰掛ける自分の太腿に卯崎を跨るように座らせ命令を下す鷲波は体勢的に卯崎に見下される形でも威厳ある王の様に見える。村人A、もしくは奴隷Bが王の言葉に逆らえる訳もなく言われた通り控えめに印象の薄い唇から毒林檎みたく真っ赤な舌を控えめに覗かせた。

「んっ、ふうぅ、んむぅ、ぅふうっ」

少し出しただけの舌はぢゅっぢゅっと下品な音を立てて歯同士ががちんっとぶつかってしまいそうな勢いで唇を重ねてきた鷲波に吸われる。引っ込めようにも離さないという勢いで吸い付いてくる鷲波の行為に卯崎はなす術なくされるがまま。唇を塞がれてしまい鼻から抜ける息が目下の鷲波にかかってしまう。

鷲波の蹂躙の波は激しくなるばかりで、吸い付いていた唇をようやくしてから一度離すと呼吸のため空気を取り入れようと口を開く卯崎に休憩させる間も無く間髪入れず無防備な口内へと舌を侵入させる。

舌だけが鷲波から切り離され独立した別の生き物のように、口の天井、舌の裏、歯茎全てを縦横無尽に動き回る。
卯崎は力が抜け鷲波の肩を掴んでいた手が緩む。それを見計らって鷲波は唇をやっと離した。

「んん、ぅん、っふぅ、んっ」
「…ん、うさ、すごい押し付けてくる」
「らってぇ…っ、いいんちょおのちゅう、きもちぃっ、もっろ、したぃ…」
「だーめ。これは良い子になるための指導だよ?うさが喜ぶことはしてあげない」
「しょ、そんなっ…やだっ、してほし、おねが…っ」

そんなにしたいなら自分からすればいいのに、あくまで鷲波から仕掛けられるのを待つ受け身な卯崎に鷲波の心に水滴のような征服欲がぽつりと落ちる。
可愛らしくも淫靡な卯崎のおねだりは叶えてやらないで太腿の上から降ろし指導室と委員長室を繋ぐドアに両手をつかせて尻をこちらに向けさせた。
小さな卯崎の男の象徴はキスだけで既に限界を迎えていて卯崎のズボンを脱がせるのに鷲波は笑みをこぼした。

「うさ、もうこんな勃ってる」
「あぅ…言わないで…」
「なんで?キスしただけでこんなになるから?」
「ふあっ、あっあっ」

ズボンとトランクスを膝あたりまでずり下ろされた卯崎はそんな格好のせいで思うように身動きとれず鷲波との行為に期待して濡れていた秘孔に七日間、触れられ慣れた指を一本挿入される。
締まりはキツくも、受け入れる準備は出来ているとでも言うかのようにぐねぐねと柔らかく不規則にヒクついて鷲波を誘う。

「いんちょお、っあっ、あっも、ほし…っ、がまんできないぃ…っ」
「早いよ…ほんと、がまんが出来ない子だな」
「ふあ、あっ、ゆびだけじゃ、やらぁ…。おれ、がまんしたもんっん、きょおずっと、いんちょおと、ん、ぅ、こうしたかったの…がまん、してたっあ」

それは果たして我慢したことになるのだろうか。鷲波は深く追求することもせずいつのまにか二本三本と増やしてぐにぐにと自在に卯崎の中で動かしていた指をずるりと抜くと、遂に自分のズボンをしめるベルトに手をかける。

「はぁ、うさ…っ」
「ちょおらいっ、いいんちょおのっ。おれのナカ、きてえ。いんちょおとえっちふるの、すきぃっ」
「やらし…。ほんとにヒートは昨日で終わったの?どこでそんな誘い方覚えて来てんだか」

鷲波はベルトを外してズボンのチャックを下ろしっぱなしにし、ボクサーパンツの中から熱り勃った分身を曝け出す。

「いいんちょおっ、はやく、いっぱいして」
「っ、うさ、っ」
「んぁああっ、あっきたあっあんっ」

少し慣らしただけでびしょびしょに濡れているそこに鷲波は自身をあてがい、ゆっくり開拓するみたく挿入する。
それだけで卯崎は嬌声をあげる。鷲波からその表情は確認できないが快感に酔い痴れた顔をしていることだろう。

二人していつのまにか個別指導中だということも忘れーあくまで建前だがー、鷲波はゆるゆると腰を動かして卯崎のナカを侵攻する。鷲波はそのまま卯崎にバッグハグをしながら、卯崎の胸の前で手を交差させふたつの頂も弄る。

「いんちょお、っあん、いんちょうっんすき、すき」
「ん…、うさ、俺も。こんなことするの、好きな子だけにだよ」
「っっ」

鷲波の告白に卯崎は快楽の波に飲まれながらも胸がきゅっと詰まったような気分になった。鷲波の言葉に喜んでそうなったのではない。

卯崎は体から始まった関係とはいえ、鷲波のことがこの一週間で好きになった。しかしそれをまだ自覚はしておらず、名付けようのないその感情をイコール抱かれたい、と思い込んでいるところだ。

そして鷲波はセックスという行為は好きな人としかしないと、行為中にその相手である卯崎に向けて言った。本来ならここで、自分は鷲波に好かれているのだと自覚するところだが、それを卯崎はとんでもない受け取り方をした。

本来なら好きな人としかしない行為を鷲波は優しいから自分の我儘を聞いて叶えてくれていると。
卯崎には鷲波に好かれているなんて頭がなかった。

「ん、ふうっ、あっんんっ」
「うさっ、はぁ…っ」

無駄に貞操観念が低い故の勘違いである。
セックスという行為は思いを寄せる相手とするのが一般的だが、卯崎は今までヒートが訪れるたび、その熱を冷ますため街に降りて学園の人間ではない見ず知らずの他人と何度も夜を明かした。
オメガ性のせいとは言え、強すぎる性欲を持て余しているとは言え、自分が好きでもない人とセックスできるから、卯崎はてっきり鷲波もそうなのだと思い込んでいる。

それでも押し寄せる快楽には逆らえず鷲波の律動に揺さぶられるまま。ふと、背後から右のうなじ辺りにぞっと脊椎を撫で上げられるような感覚と共に熱い吐息を感じる。

「っうさ、はぁ、ここ、噛みたい…っ」

鷲波の言うこことは言わずもがな頸のことである。
アルファが行為中にオメガの頸に強く噛み付いて痕を残すだけで番契約は完了する。といってもその行為はヒートの時だけしか効果を発揮しない。
昨日ヒートを終えたばかりの卯崎に噛み付いたところで、痛みを与えるだけで終わるのだが鷲波の言葉は求愛の言葉と言っても過言ではない。

行為中とはいえ卯崎も鷲波も告白しあって同じ思いだったということが判明したのだ。

鷲波からしてみれば事実上卯崎は鷲波を受け入れたと同然。しかし、そんな鷲波の求愛の言葉を卯崎は受け入れなかった。

「ふぁっ、あっ、ん、だ、めえ!っぁあっ、かまな、で…っあっあっ」
「っ?!はぁ?!っ、」

心も体も最高の状態で迎えるはずだった絶頂は鷲波にとって意味の理解できない卯崎の言葉によって止められた。

顔の見えない、鷲波の胸の中で快楽に溺れる卯崎は手を胸の前で交差させて手のひらでうなじを覆って、後ろの鷲波から隠した。

いやよいやよも好きのうち。
喘ぎながらの拒否だったから鷲波も一瞬冗談かなにかと思った。だがこの行動こそが卯崎の本心なのだろう。自分と番になるのを卯崎は望んでいないーー、今さっき鷲波を好きだ好きだと激しく求めたのは卯崎で、鷲波はとんだ裏切りにあった気になった。

緩やかなピストンは次第に動きを止めて、鷲波は卯崎の顔を頬を押して後ろを向くよう誘導する。

「ん、あっ、なんで…」
「っは、うさ…、俺の番になりたくないの?どういうこと?」
「だ、って…、いいんちょは、俺のことすきじゃない…」

もし絵の中ならば鷲波の頭上にはいくつもハテナが浮いているだろう。

「いいんちょは、やさしいから…っ、おれがえっちしたいっていったから、シてくれてるだけなのに…っ、そんな、つがいになってなんて、おこがましいこと言えない、」

そこで鷲波の中の歯車ががちゃんと噛み合った。
卯崎は自分の好意に気づいていないのたと。それならば卯崎の言動に納得ができる。

鷲波も決して行為中の雰囲気に流されて頸を噛みたいと言ったわけではない。そもそも好きにならなければ卯崎じゃあるまいしいくつもの夜を共に重ねない。
可愛さ余って憎さ100倍とはこういう事なのだろうか。鷲波はふつふつと湧き上がる苛立ちをはあ、とひとつ強く吐いた。

「ん、ぅ…いいんちょぉ…、つづき、シて…?」
「っ、とんでもないおばかに引っかけられたもんだな」
「い゛っぁあぁっ、ぅあっ、あん」

そしてまた粗めの力任せに打ち付けるような律動を再開することで無防備になった卯崎の右側の頸を鷲波は喰いちぎる勢いで噛み付いた。

「い、いたいっ、な、んん、なんでぇ…っあっ、あん」
「はぁ、噛みたいって言っただろう」

噛み付いたと同時に鷲波は決意した。必ず次のヒートが来るまでにこのばかの気持ちを自覚させ今度こそこの頸に一生消えない痕を残すと。

「だめ、ってぇ…ぁんっあっあっ、いったのにぃっ」

それまでは歯型がはっきりと残った真っ赤に充血するしばらくは消えないそれで満足しよう、鷲波の指導は長期戦になりそうだ。




……

ヨンさま、いかがでしたでしょうか。
個別指導が読みたいとのお声を頂いて、エロの指定はなかったのですががっつり(パラパラ比)どエロ作品になってしまいました。
楽しんで頂ければ本望です、、!

ヨンさまに限り転載可とさせて頂きます。
リクエストありがとうございました!





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