魔族Bの魔王城観察記録
 

“千年ぶりに魔王が代替わりした
バルコニーから魔王妃様をお抱えして下々の我らに目線をやる新しい魔王様の美貌と威圧感は圧倒的だった
記念すべき節目を新たに記録をつけていくことにしよう”


“お披露目式から数日、前魔王派の魔族たちが公務中の魔王様を襲ったがデコピン一つで返り討ちにされていた
新しい魔王様は美しさと威厳だけでなく強さも兼ね備えたお方だ
それは魔族が一度に何百と束になって襲いかかっても蟻を踏み潰すが如くいとも簡単に、跡形を残す事無く蹴散らしてしまう強さだった”


“先ほど自己再生中のロマネ宰相様をお見かけした
びよびよと赤黒い触手みたいなものが切断された上半身から何本も伸びて下半身を形成していく その様子は正直グロい
ロマネ様を敬愛するという魔族が動かなくなった下半身を持ち去っていったが何に使う気なのだろうか…
魔王様の虫の居所が悪かったせいで八つ当たりされたとロマネ様がおっしゃっていた まさに天上天下唯我独尊の魔王様だ”


“サフラン様がまた部屋を抜け出して城をへ抜け出そうとしていた
安易に接触すると魔王様に消される サフラン様の魔王様を抜いた11人の息子さまたち以外の、私たちのようなヒラ魔族は話しかけてはいけない暗黙のルールがあるため、近くにいた七番目のビザン様に報告しておいた
ビザン様はわっはっは、しゃあねえなあと笑ってサフラン様の首根っこを子猫を運ぶ親猫のような様子でひっ掴んで颯爽と去っていった”


“今日も前魔王派の魔族たちが懲りずに悪事を企てていた
現魔王様に仲間たちが跡形も無く消されたというのに
しかし二の舞にはならないよう学んだのか今回は毒殺を企てたようだ 魔王様とサフラン様の食事に魔界一の毒を持つと称される魔大蜘蛛の体液を混ぜていた
二人にお出しする前に気付いた料理長のムデハル様は肩から肩甲骨にかけて生える八本の腕で犯人ら六人全員を一度に絞め殺していた
サフラン様は毒入りの料理を美味しい美味しいとバクバク食べてらっしゃった 毒の耐性がものすごい”


“三百年ぶりにお見受けする一番目で夢魔のルネ様は相変わらず愛らしくいらっしゃった
何人かの仲間が魅了され文字通り干からびるまで精気を搾り取られていたが わたしも正直 死んでもいいからお相手して頂きたい”


“平和な魔王城にお呼びでない来客があった 勇者を名乗る人間を筆頭に突然やってきた魔王討伐パーティだ
魔王様が変わられたのを機に討伐にやってきたというなんとも愚かな人間たちだった
こうして年に一度はやって来るが魔王城に人間たちが侵攻出来た日はない
城門前でお昼寝していた大黒獅子の魔族で九番目のギリシア様の寝起きのおやつとなっていた”


“魔王城には城にお仕えする魔族たちで形成されたファンクラブがある もちろん魔王警備隊を名乗る魔王様直属軍が一番組織として大きく、忠誠心の高い精鋭たちだ 次いでロマネ様のファンクラブだ
冷たい爬虫類の瞳孔で睨まれ罵られ踏みつけられたいとドマゾでド変態な魔族たちが集まる むしろファンクラブがあるのはサフラン様の超美形の12人の息子さまたちだけだが、ルネ様だけは無い 出来てもルネ様がすぐに喰いつくしてしまって魔族がいなくなってしまうからだ”


“サフラン様の息子さまたちの仲はあまり良くないらしい
魔王様に八つ当たりで痛めつけられたロマネ様がさらに八つ当たりで超武闘派の五番目の三色の瞳を持つマヌエル様や三番目のダークエルフのロココ様をコテンパンに一方的に痛めつけている様子を見かけた
息子さまたちの強さは我らとは比べ物にならないほどそれはそれは恐ろしい強さで 仲裁しようものなら止める前に攻撃の余波で死ぬ 仲裁なんて自殺に等しい
そして息子さまたちの中で八つ当たりが横行しその皺寄せは最終 いつも我らヒラ魔族にくる それで命を落としたものも数知れず 息子さまたちには仲良くして頂きたいものだ”


“サフラン様と息子さまたちもあまり仲が良い方ではないようだ それは 夫である 魔王様にも言える
毎晩毎晩 魔王様とサフラン様の居城の方からサフラン様の尋常でない泣き叫ぶ声が聞こえてくる 普段からも魔王様を誰か暗殺してくれと口癖のようにおっしゃっている
魔王様以外の息子さまたちも 魔王様を恐れてかサフラン様との間に一線引いた接し方をしているようだ”


“また前魔王派の魔族が悪事を働いた
暇つぶしに散歩へ行ってくるとまた軟禁している部屋から脱走したサフラン様にあろうことか奇襲をしかけようとしたのだ
サフラン様の危機に魔王様、ロマネ様、ルネ様、ビザン様…息子様たち12人が全員が当然のように現れて、およそ100はおろう前魔王派の魔族たちをそれは酷く苛く圧倒的な暴力で平伏させた
サフラン様は襲われかけたことなどに気づきもせず鼻歌歌って散歩を続けている
こういう時の息子さまたちは協力というか連携がとれていて少し平和である
そしてみなさま口を揃えて サフラン様には黙っていろと仰る サフラン様に危険が及ぶことは息子さまたちがいる限り絶対ない 守り通すから 余計な不安の種を与えるな ということらしい
なんだかんだ みなさま サフラン様が好きでのだろうか”


“今日もサフラン様とロマネ様が一悶着起こしていた 魔王様に直接文句を言えないサフラン様がロマネ様に八つ当たりするみたく魔の森に帰らせろ、召喚させろと癇癪を起こすのだ 定期的なソレにロマネ様はガン無視していた
しばらくすると魔王様がサフランさまの回収にやってきた サフラン様も正直学ばないお方である また脱城の刑とか言って魔王様に言いようにされるに違いない
ロマネ様はまた下半身を引き千切られていた どマゾファンクラブらの魔族らが物陰から目を光らせていて背筋がゾッとした”


“今日も今日とてサフラン様は脱走を試みていた しかも一度や二度ではない
脱走する度に息子さまたちに捕まって部屋に戻されてしまっていた しかしサフラン様はどうしても今日は魔の森に帰って作りたいものがあると喚いていた
そう言えば明日は 魔王様が就任してちょうど一年記念だ 魔王様が召喚された日、つまり生まれた日である まさかサフラン様はお祝いに何かを贈ろうと…?それならば一度くらいの外出、大目に見てあげてほしいものである”


“わたしの予想は当たっていたようだ サフラン様は魔王様の誕生日に贈り物をなされていた ヒラである一魔族のわたしには贈り物の中身がなんなのか知る術はなかったが その日一日中魔王様は滅多に無いほどご機嫌だった
仲悪く見えて、サフラン様も実は魔王様を想ってらっしゃるようだ 本当に素直じゃない

なんだかんだで魔族領は今日も平和である
千年 こんな平和な日が毎日続いて欲しいものだ”


……

くどさま、いかがでしたでしょうか。
本編ではあまり触れないバロック以外の息子たちの生活やサフランが知らない事実など詰め込めるだけ詰め込んでみました(笑)お楽しみ頂けたら幸いです

くどさまに限り転載可とさせて頂きます。
リクエストありがとうございました!





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