気づけばもうすぐ一時間が経とうとしていた。巻き終えた髪の毛をアップにして、耳には雫型のイヤリングを。ポシェットを片手に慌てて外に出た時だった。ドアから少し離れた所にワインレッドが視界に入ったのだ。
「あ、有栖川さん!?」
「やあ。少し早めに着いてしまったのでね」
明るい時に見る有栖川さんは酷く印象が変わったように思えた。身に纏うグレーのジャケットの中には、からし色を基盤とし、控えめに入った白のストライプのベスト。スキニーパンツは裾を折り返し、そこから見えるベストと同じ色の靴下。一見派手に見えるが、髪の毛の色と、有栖川さんの顔の良さのせいか、派手と言うよりはお洒落な紳士と言うところだろうか。
「お待たせしちゃいました…?」
「とんでもない。それじゃ、ワタシのお勧めの喫茶店にでも行こうか」
お手をどうぞ、と左手をそっと差し出される。急激に熱くなる頬を左手で抑え、ちらちらと有栖川さんの目を見た。にっこりと微笑むその笑顔はずるいなあ、なんて思いながら、彼の左手を取り歩み始めた。
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