流星を手放した5
 おろしたてのワンピースは、一ヶ月程前にウィンドウショッピングをしている時に一目惚れしたものだった。生成り色のニット生地の右側には、大胆に入ったスリット。そこから覗かせるように履いたグレーのチェック柄のスカートは、ちらちらと見えてなんとも可愛らしい、と思う。服装は。顔はと言えば、いづみのように大きくくりくりとした目でもなく、唯一まつ毛はまつエクに行ったばかりだから救いようがあると言うか。肌も日頃からスキンケアを怠っていなかった為、まあ、普通であろう。コットンに500円玉程の化粧水を広げ、ぱしぱしと肌に吸い込ませていく。それから同様に乳液も。全体に浸らせたら両手できゅっと頬を包み込み、乳液を逃がさないようにする。下地を手に取り顔に広げ、普段は絶対に使わないお高めのファンデーションを手のひらに乗せ、指でとんとんと抑えながら広げる。それからスポンジでぽんぽんとふんわりと広げると、いつもの数倍綺麗な肌の出来上がりだ。

 気づけばもうすぐ一時間が経とうとしていた。巻き終えた髪の毛をアップにして、耳には雫型のイヤリングを。ポシェットを片手に慌てて外に出た時だった。ドアから少し離れた所にワインレッドが視界に入ったのだ。

「あ、有栖川さん!?」
「やあ。少し早めに着いてしまったのでね」

 明るい時に見る有栖川さんは酷く印象が変わったように思えた。身に纏うグレーのジャケットの中には、からし色を基盤とし、控えめに入った白のストライプのベスト。スキニーパンツは裾を折り返し、そこから見えるベストと同じ色の靴下。一見派手に見えるが、髪の毛の色と、有栖川さんの顔の良さのせいか、派手と言うよりはお洒落な紳士と言うところだろうか。

「お待たせしちゃいました…?」
「とんでもない。それじゃ、ワタシのお勧めの喫茶店にでも行こうか」

 お手をどうぞ、と左手をそっと差し出される。急激に熱くなる頬を左手で抑え、ちらちらと有栖川さんの目を見た。にっこりと微笑むその笑顔はずるいなあ、なんて思いながら、彼の左手を取り歩み始めた。
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