流星を手放した4
 けたたましく鳴り響く目覚ましの音に、私はうっつらうっつらと目を開けた。ばしり、と目覚まし時計のスイッチ部分を叩き、大きく伸びて、軽く腕を伸ばしストレッチをする。そうすると、目覚めがよくなると前にテレビで言っていたが本当なのだろうか。
 ふと枕元に置いてあったスマートフォンをタップすると、LIMEの通知があった。誰だろう、と名前を見ると”立花いづみ”とそれから”有栖川誉”の文字だった。ぼうっとしていた脳が一気に覚醒し、慌ててLIMEの画面を開いた。いづみの方が先に送ってくれていたのだが、心の中で謝って有栖川さんのメッセージの方を先にタップした。
 ”昨日は監督くんを運んでくれて有り難う。監督くんもお礼を言っていたよ。”
 ”今度お茶でもどうかね。”
 2つに分けられたメッセージに心臓がどくり、と動いた。お茶と言うのは、本当に喫茶店で会話をするだけなのか。はたまた有栖川さんは言葉の引き出しが多いから、デートをお茶と言いまわしたのか分からない。
 ただ言える事は、有栖川さんとまた会えると言う事だけなのだ。また、会える。何故また会える事に私は喜びを感じているのだろうか。答えは簡単だった。

「わたし、有栖川さんの事好きになったんだ」



 ”こちらこそ昨日は有り難う御座いました。私は今のところいつでも空いてるので多忙な有栖川さんにお任せします。”と返事をし、いづみのメッセージも見た。予想通り、お礼の言葉と謝罪の言葉の嵐だった。後で電話しようと思い、スマートフォンをその場に置き、一人寂しく一昨日スーパーで買ったパンにありつこうとした時だった。静かな部屋に着信音が鳴り響き、びくりと肩を揺らせた。こんな朝早くから誰だろう?疑問に思いスマートフォンを片手に取ると、まさかの人物からの着信だった。

「も、もしもし…?おはようございます」
「おはよう。突然電話したのだが、大丈夫だったかね?」
「え、ええ。大丈夫です。昨日は有り難う御座いました」
「お礼を言われる程でもないよ。紳士として当然だからね」
「はあ…。ところでどうされたんですか?」
「ああ。君さえよければ、今からモーニングでもどうかな、とお誘いの電話だったのだが、もしかしてもう朝食を済ませたのだろうか?」
「い、いえ!ま、ま、まだです!いいんですか?」

 ふむ、と電話越しで頷く有栖川さんに私は高鳴る気持ちを押さえつけた。それから今から一時間後にそちらに向かうから家の前で待っているように言われ、電話は途切れた。へなへなと床に座り込み、嘘でしょと呟きながらスマートフォンの画面を眺めた。嘘ではない、何故なら”有栖川誉 通話2:50”と出ているのだから。