「う……っ。」
短く唸りを上げると、隊長は目ざとく反応し、私の顔を窺った。
私が大丈夫だと告げようと口を開くと、漏れたのは酷い咳。
すると、隊長の掌は私の頭から額へ移動し、最後は首へと降りて来た。
「……。」
私が擽ったさから身を捩っている間、隊長は深刻そうに顔を顰めていた。
「た、隊長?」
耐え兼ねて私が声を挙げると、隊長は懐から何かを出し、それを私の前に突き出した。
「……え。」
「熱、まだ高いんだろ。」
渡されたのは、はっか飴一つ。
「今更だが、無理しなくていい。……これでも舐めて、治るまで、ちゃんと休め。」
そう言って、隊長は半ば無理やり私に飴を持たせ、布団の中に押し込んだ。
「あ、りがとう……ございます。」
大人しく――反抗する気力もないため、それに従い、肩まですっぽり布団を被ると、隊長は満足そうに表情を緩めた。
「じゃあ、早く治してくれ。」
「え? あ、はい。頑張ります。」
「頼むぜ。お前の淹れた茶が一番美味いんだ。」
隊長は僅かに微笑んでみせると、もう一度私の頭を叩いた。
それから、隊舎に副隊長を一人残してきた事を告げ、病室を後にした。
その後、一人になった私は、手中に収まる飴を舐めるべきか、ずっと保管し続けるべきか悩む事になったのである。
(お早うございます、隊長! お茶淹れに来ました!)
(阿呆。治ったら来いと言った筈だ。)
end
09.09.22 執筆
10.12.09 加筆修正
初夢小説。恥ずかしいけど懐かしいので置いておく。