Shrot story
04
「くそ……っ!」

 失念していた。
 こんな日に、外の任務に行かせるべきではなかった――否、朝から体調の悪い素振りを見せていたのだから、早々に仕事を切り上げさせるべきだったのだ。
 彼奴は、体調不良を進んで訴える奴ではない。仕事中となれば、尚更だ。
 もっと配慮するべきだった。
 もっと――……。

「!」

 霊圧を探りながら、ひたすら地面を蹴っていると、微弱ながら、四番隊から丸井のものを感じた。
 既に屋内に居たことに、心から安堵する。が、矢張り十番隊に真っ直ぐ帰ってこられる体調ではなかった事に、罪悪感に似たものを覚えた。
 細々とした霊圧からして、体調は大分良くないようだ。

「……っ。」

 半ば八つ当たりをするように、四番隊に向かって地面を蹴り上げる。
 心なしかいつもより進みの悪い瞬歩に舌打ちし、一気に走り込んだ。




「丸井っ!」

 病室には不似合いな大声で名前を呼ばれ、思わず肩が跳ねた。
 スパンと威勢よく開いた戸に驚き、もう一度肩を揺らす。が、其処から現れた人物に、もう一度驚かされた。

「隊長。……何かあったんですか?」
「っ馬鹿野郎。何かあったのはてめえだろ。」
「ああ、成る程。お見舞いですか。」

 私の一言に、隊長はぴくりと眉を動かした。
 その影で、隊長の表情から緊張が解けた事に、私はこっそり気が付き、一人頬を緩める。

「この野郎……。俺がどれだけ心配したと思ってんだ。」
「心配してくれたんですか?」

 今度こそ、はた目から判る程に緊張を解いた隊長は、呆れた顔を見せた。
 どうやら、本気で心配してくれていたらしい。
 すると、にやける私に気が付いたらしい隊長は、少しムッとしたように眉間の皺を深めると、低く呟いた。

「……当然だ。あの程度の虚退治にこんなに時間かけやがって。」
「ぶっ倒れる程不調なのに、一応任務遂行したんですから、尤もな説教する前に、褒めて下さい。」

 隊長は、呆れを含んだ溜め息を、おもむろにと漏らした。

「……。」

 そして、隊長の温かく華奢な掌が私の頭を優しく叩いた。
 子供をあやすようなその動きが、何やら無性に擽ったい。

「……ご苦労さん。」

 嬉しくて、擽ったくて、目を細める。
 すると、空気など読むつもりもないらしい。喉が酷く痛みだした。
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