Shrot story
01

 近頃、私は悩みっぱなしであった。私の恋人がなんだかこの頃素っ気無いのである。
 元々どこか冷めたところのある男性ではあったが、それにしたって冷たい。気がする。
 休日が合えば一緒に過ごすし、私が希望すれば買い物にも遠出にも付き合ってくれるし、私の作った料理はきちんと食べて、感想もお礼も言ってくれるし、ボディタッチも愛の行為もそれなりにある。私が体調を崩せば、膨大な仕事に無理矢理区切りをつけて、看病までしてくれる。
 大切にされていることは、アホな私も充分わかっている。
 しかし、どうも近頃の私達はどこかちぐはぐで、彼は前より冷たくなったような気がしてならないのだ。
「所謂マンネリ、かしらね。」
「ええ、いやだ……。」
 私達の関係をよく知る松本副隊長は、頬杖をつきながらぽつりと言った。
「だって、きっかけとか心当たりないんでしょう?」
「あったらこんなにモヤモヤしてないよう。」
「そうよねえ。」
 困ってしまった。
 見るからに経験豊富な松本副隊長になら、あの気難しい冬獅郎の気持ちがわかるかも知れないと相談を持ちかけたのだが、どうもこればっかりは副隊長にも難問だったらしい。
 2人してうーむと口を尖らせるものの、さっぱりそれらしい原因は見つからないのだ。
「ああ、冬獅郎がわからない……。」
 思考がパンク寸前だった私は、目の前の机に頭を突っ伏す。副隊長はそれより早く茶菓子をどけた。
 静かな執務室には、私と副隊長の2人だけ。冬獅郎は隊首会に行っているので当分帰ってこない。どうせ終わりに浮竹隊長に捕まるだろうから、帰ってくるのは日が暮れてからだ。
 それまでに今日のノルマを終わらせなければいけないが、如何せん仕事が出来る精神状態ではない。副隊長も仕事をするつもりは欠片も無さそうなので、向こうの机に積まれた書類は、明日に持ち越しだろう。
「……。」
「円香、今嫌なこと考えたでしょう。」
「そんなことないですう……。」
 言いながら机にぐりぐり額を押し付ける。
 仕事が片付かないのは冬獅郎のせいだと自分に言い聞かせ、荒れる心を鎮めるが、次々と産まれる負の感情は、喉を迫り上がってため息や弱音として口から漏れていく。
「もう嫌だ。冬獅郎の馬鹿。」
 音こそしないものの、副隊長がため息を吐いたのが分かった。
「正直、話聞いただけだと、隊長のどこが冷たいのかさっぱりわからないのよね。」


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