「ちょっと疲れちゃって。」
「ふぅん。あんまり帰りが遅いからアルも心配してるよ。早く帰ろう。」
傍らに置いてあった紙袋を軽々持ち上げると、エドは左手を差し出した。
「……うん。」
慣れない事にどぎまぎしながら、ぎこちなく右手を差し出すと、エドは指を絡めるように強く繋いで、さっさと歩きだした。
目を合わせて欲しい。手を繋いで欲しい。私と会話して欲しい。キスをして欲しい。
さっきまでぐるぐると私の中を巡っていた欲望が、右手から伝わるエドの体温に溶かされていくようだった。
「エド、迎えに来てくれて、ありがとう。」
一歩先を歩いていたエドを追いかけて、顔を覗き込むように言うと、エドは目を丸くするとすぐに細めた。
「次は一緒に出掛けるか。」
「いいの?」
「当たり前だろ。……何変な気ィ使ってんだよ。」
繋いでいた手を離されると、乱暴に頭を撫でられる。
ぐしゃぐしゃになった髪を整えながらエドを見つめると、私の視線に気付いたエドが微笑んだ。
「それにしても、今日は随分買ったんだな。」
小さく紙袋を揺すりながらエドが言う。
「え? 最低限の物しか買ってないよ。」
「それにしちゃあ重いぞ。」
眉を寄せたエドの言葉に、改めてエドの腕を引っ張って紙袋を覗くと、確かに量が多い。
「……あ!」
中身を掻き分けてみると、買った記憶も店先に並んでいた覚えも無い瓶詰めの蜂蜜が袋の底に入っていた。
「お店の人、間違えたのかな。」
言いながら袋から取り出すと、エドは紙袋から更に何かを取り出して呟いた。
「そうでもないみたいだけど。」
エドが持っていたのは、小さな紙の切れ端。
目を丸くして覗いてみると、そこには少し乱暴な筆記体で『cheer up』と書かれていた。
2人で顔を見合わせて、顔を綻ばせる。
「……エド。」
蜂蜜の瓶を紙袋に戻していたエドは、私の声に顔を上げた。
「手、繋いで帰ろう。」
エドは嬉しそうに笑うと、また左手をこちらへ差し出した。
end
15.12.22