[01]
時を遡ろう。
今よりも幼かったあの頃に。
歯車が狂い出す前のあの日々に。
「おいお前らヒーローごっこすんぞ!俺がヒーローでデクが
「かっちゃん僕もヒーローがいい……」
「えぇー……人質やだ。ヒーローごっこじゃなくてお姫さまごっこしよう?かつきくんといずっくんがお姫さまで私が王子さま!」
「クソ変じゃねェか!!そこは俺が王子でデクが下僕、お前が姫だろ!……んだよ、その顔」
口を尖らせて不満気な私に文句を言う勝己くん。それでも結局私の遊びに付き合ってくれるのだ。
物心ついた時から私の両端にはいつも二人がいた。喧嘩をするのは日常茶飯事。特に出久くんと勝己くん。間に挟まれる私の身にもなって欲しいが、隣同士で並ばれても私の役割は変わらない。幼少期は二人の喧嘩を止められずにギャン泣きして逆に二人を困らせていた気がする。結果的に仲裁出来ていたので良しとしよう。
爆破という派手な個性を発現させた勝己くんの性格はそれをきっかけに更に悪い方へと加速した。その主な犠牲者は出久くんだ。なんでも彼は足の小指に関節が二つあるらしい。それは研究結果から見ると個性を宿さない型で、現代社会においてはとても珍しいとのこと。無個性……そんな彼を見下しているのが勝己くんなのだ。
かく言う私も足の小指に関節が二つ存在しない新しい型ではあるが、中学生になった今でも個性が発現していなかったりする。両親の個性はヒーロー向きどころか、日常生活においてもあまり役に立つとは思えなかった。勝己くん的に言えば没個性。そんな個性ではあるが、やはり羨ましくは思ったりする。
「中学生になったのに、結局個性発現しなかった。何でだと思う?勝己くん」
折寺中学校の入学式当日、式自体は何事もなく終わったが、クラスで行われた自己紹介で気持ちが沈んだ。自己紹介で必ずと言っていいほど皆自分の個性を公表したり、披露したりするのだ。もはや暗黙のルールと化していた。私はそれが嫌いだった。個性の発現すらしていない私は個性は秘密ですと慣れつつある回答をして場をやり過ごしている。
無個性なのではとか、実は凄い個性を隠し持ってるだとか、中学に上がってからも暫くは噂だけが一人歩きしそうだ。只でさえ幼馴染二人や数少ない友人ともクラスが離れてしまってげんなりしていたのに。
個性を秘密にした私の印象は良くも悪くも変わったやつだと思われたに違いない。個性について触れていいものなのか、地雷ではないかと大半の者が私との接し方が分からないようで、クラスの中で遠巻きに見られているのが分かる。私自身も人見知りをするタイプだから入学当日にクラスに溶け込むことは不可能だと早々に諦めていた。
そうしていつもの如く序盤に自らの発言で躓いた私は背を丸めながら一人でとぼとぼと帰宅していたのだが、後ろから頭を小突いてきた犯人と合流して今に至る。
「は?知るかよそんなん。お前はクソデクと違って一応新しい型なんだろ。つか案外もう発現してたりすんじゃねェか?泣き虫の個性とか」
「何それ馬鹿にしてるの?!それにもう泣き虫じゃないし!」
「どうだか。今だってメソメソウジウジ泣きそうじゃねェか。くそ面倒クセェ。その内体から蛆虫湧いてくる個性かもな」
「気持ち悪いこと言わないでよ!想像しちゃったじゃん……」
勝己くんはなんだかんだ優しい。こうやって入学式や新学期が始まる時、落ち込んでる私の事をお見通しなのか、決まって一緒に帰ってくれる。個性の話では私に気を使っているのかいないのかは分からないけれど、私的に無個性の方がマシだと思ってしまうような個性を揶揄して挙げてくれる。
出久くんが無個性であることは周りにばら撒いている彼であるが、私が個性を発現させていない事を皆に言っているところは見た事がない。むしろ幼馴染である勝己くんに私の個性を聞きに来た好奇心旺盛な生徒に対して知らないの一点張りで挙げ句の果てに執拗い生徒には「クソうぜぇ爆破すンぞ!」と脅していたのを見た事がある。私はそれを彼なりの優しさだと勝手に解釈した。
「……まァ、どうでもいいけどよ。お前只でさえどんくせェし弱っちィから個性があろうがなかろうが
「どうでもいいって……」
「……いずれはオールマイトをも越えるトップヒーローに俺は成る。んで高額納税者ランキングに名を刻む。……仕方ねェから俺がお前を
なんとも上から目線な発言、それと同時に自分がとんでもなく恥ずかしい殺し文句を言っている自覚はあるのだろうか?両掌で小爆破を繰り広げながら歩いてるところを見ると気付いていないんだろうな。少女漫画とか読んでる勝己くんも想像出来ないし、女の子がキュンとくる台詞もきっと知らないだろう。素で言っているから此方が照れてしまったのが癪だ。
「……
「生きろや!つか、こちとら標的間違える訳ねェだろ!馬鹿か殺すぞコラ!」
「いやどっち……」
生きろだの今しがた守ってくれると言ったのに殺すだの我が幼馴染様は相変わらず暴君だ。
目次へ
Top