アルネトーゼ
プロローグ
空が朱く染まっている。
ここは地獄なのだろうか。のどかだった村は猛火に焼かれ、人々の恐怖の叫びが炎の音をも凌駕する。虚ろに開いた赤い目には、すでにこと切れた夫と息子の身体が映っていた。
――なぜ。
誰も助けてはくれないのだろうか。このまま殺されてしまうのだろうか。美しき戦鬼に呆気なく葬られた村人や家族たちの無念は、どこへ行くというのか。
――全て消えた。伴侶と決めた男も、ずっと住んでいた村も、愛した子どもたちも……幻のように消えてしまった。
炎に劣らぬ赤い目に映された兵士たちは、何かの衝撃を受けたかのように一瞬唸り、そのまま倒れた。妙齢の女性はそうしてひとり、またひとりと手に掛けた。
――そう、全てはこの者たちが奪ったのだ。
女性の真紅の双眸が怒りに燃える。心は憎しみに満ちていた。その女性を多くの兵士が取り囲む。女性は怯むことなく兵を見据えた。兵たちが一斉に女性に襲い掛かった。