わたしの陽だまり

01


 一年の冬。ホリデーで実家に帰ったら、父親がカリムの為に宴を開いてくれて、その席には、見慣れない女の子がいた。
 見たことがないわけではない。どこかで会ったことがあるのだろう。そんな感じの印象の女の子は、明るい薄紫のヒジャブを頭に巻いている。
「こんにちは、カリム様!」
 その嬉しそうな笑顔は、なんだかかわいかった。

 サナがアジーム家の屋敷を出てから、カリムはなんとなくこんな話をジャミルとしてみた。
「ジャミルも来年には、結婚相手をジャミルのとーちゃんが連れてくるかもしれないな」
「そうだな」
 いつかは誰かをめとらなければならなかっただろう。それはカリムにとっての義務であり、カリム自身なんの疑問にも思っていなかった。しかしそうは言っても、それが今このタイミングでくるとは想像していなかった。カリムの前で恥ずかしそうな仕草をする女の子を見つめながら、ああ、そういう時が来たんだな、と半ば他人事のように思っている自分がいた。
 サナと名乗ったその女の子は、父の商売仲間の家の娘さんらしく、カリムのことをたいそう気に入ってくれたから是非に、とのことだったらしい。明るく元気でよく気がついて、教養もあって、一緒に過ごした時間は楽しかったし、あとはやっぱり笑顔が魅力的だった。父は「結婚相手にどうだ」とサナとカリムを引き合わせたようだが、特に断る理由もなかったから、学園を卒業したら結婚する話になっている。
 次に会うときは、何か手みやげを持って帰った方がいいだろう。出会った時は知らなかったから、ちゃんと贈り物をしてあげられなかったけれど、その分いいものをあげればいい。何がいいだろう。宝石、化粧品、服――それでまた、あんな風に笑ってくれたらいい。



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Written by @uppa_yuki
アトリエ写葉