ハロー僕の、〈2〉
イギリスで数年間、親友になった僕らは、お互いに住む場所がかわってもその友情が途切れることはなかった。
まなみはフランスに、僕はパパの故郷日本へ、それでも僕とまなみは文通をするのを楽しみにして。
はじめは自分の近況、そして慣れない土地で大丈夫なのか、友達は出来たのか、色々としつこく書いた。そして文章の最後にはいつも「悩み事があったら言ってね」。
その頃親しい友人の間で、手紙をだしてから返事が届くまで毎日ポストを確認する僕のあだ名がしばらくポストになったのもいい思い出。
そして返事が届けばピアノのレッスン前に何度も繰り返し手紙を読んだ。
まなみの丁寧な文字を、一文字一文字丁寧に読んだ。
そして手紙はいつも楽譜といっしょに大切に仕舞っておいた。
そしてそれからまた数年後、僕らはイギリスで再会することとなった。
「またウィリアムと一緒に学校通えるね」
「うん、楽しみだ」
その頃僕は、まなみが笑顔の素敵な天から舞い降りた天使などではなく、自分のすぐ目の前にいる同い年の女の子だったということに気がついた。
昔とは違う、ふわりとお花みたいないい香りがするのは彼女が女の子だから。
会わない間に女の子はこんなにも成長するんだなあ、なんてびっくりしたのを今でも覚えている。
「ねえ、まなみ」
「?、どうしたの」
「………いや、なんでもない」
綺麗になったね、なんて映画スターみたいにキザに言うにはまだ自分は幼すぎるし似合わない。
僕はその言葉を胸の奥にしまい込んだ。
そしてこの頃から、僕はまなみへ募らせていたらしい恋心を毎日実感することになる。
昔と同じように学校の送り迎えはまなみの家の専属の運転手さんが運転する大きな車に乗せてもらっていた。
毎朝車に乗った彼女に会う度にドキドキする。
おはよう、と笑う彼女の笑顔を独り占めしたいと思う。
先に学校につく僕をいってらしゃいと見送るまなみのくちびるに、キス、したいと思う。
授業中も頭の中は彼女のことばかり。
ピアノのレッスン中もいつも彼女に聴かせたいと、彼女に聴かせるつもりで弾いていた。
理由なんてない、ただ、彼女が好きだった。
一緒にすごすのはもう何度目かのクリスマス、まなみの家に招かれた僕ら家族はディナーを終えて両親達はリビング、僕はまなみの部屋でクッキーを食べていた。
「今日はお招きありがとう、楽しかったよ」
「家族同然だもの!こちらこそありがとう」
室内とはいえ肌寒いなか着込んでふくれたまなみは鼻を赤くさせて微笑んだ。
「ねえまなみ、僕は君にとって、どんな存在?」
「どんな存在、ってこんな風に…家族みたいな存在?」
間違ってる?というように笑いながらまなみは目の前のクッキーを頬張った。
「そうじゃなくて……僕これでも男の子なんだ、この意味わかる?」
「えっと………」
この意味、を考え中のまなみを僕はぐっと抱き寄せた。
いつもするようなハグじゃない、力強く、この想いが伝わるようにぐっと腕に力をこめた。
「好きだ」
ごくり、と自分の唾をのみこむ音がひどくうるさく感じた。
僕の腕の中でじっと固まっているまなみは、黙りこくったまま何も言わない。
「好きだよ、ねえ、聞いてる?」
「き、聞いてるよ、すごく聞こえてる、っ」
あーとかうーとか何か言おうとしているまなみの言葉を僕は待った。
「う、嬉しいよ、すごく、ただびっくりしちゃって」
からだをはなしてみた彼女の顔は真っ赤だった。
「わたしもウィリアムのこと、多分、好きだから」
「多分?」
「だってこういうの、よくわかんなくて……」
ごめんね曖昧で、と笑うまなみを僕はもう一度抱きしめた。
「僕はさ、まなみとすごく近くにいるけど、これからはもっと近くにいたいんだ。ずっと隣にいたいよ、離れたくない」
「わ、わたしも……ウィリアムとずっと一緒にいたいわ」
嬉しかった。
本当に、本当に、すごく嬉しくって、いまにも泣いちゃいそうなくらいだった。
目の前にいる可愛い天使が、僕だけをみつめて微笑んでいる。
この頃はきっと、本当にまなみは僕のことを好きでいてくれていたはずだ、もちろん異性として。
「ねえ、」
彼女のあかくなっている頬に音を立ててキスをすれば、まなみは真っ赤な顔を更に赤くさせて、目をまん丸にして驚いていた。
「好き」
夢みたいだ、夢じゃありませんように。
僕は神様に願った。
ハロー僕の、
(エンジェル)
(mon ange)
(ma chérie)
オリキャラへの気持ちが盛り上がって書いたものの、オリキャラの話を広げ過ぎたとボツに。ちょっとだけ気持ち悪いウィリアムになってしまったので丸々カットとなりました。お粗末さまです。(19/08/15)