2006/02/22に死ぬふたりA


みょうじなまえがもうすぐ死ぬって時に思い出すのは自分に向けられたイザナの笑顔と存外優しく名前を呼ぶ声で、イザナクロカワが死ぬ時に思い出してしまったのも一緒にいる時いつも浮かべてた「アホ面すんな」って言っちゃうほど幸せそうな笑顔とどこにいたって聞こえる自分を呼ぶ明るい声だったもんね

黒川イザナと同じ施設の出で幼馴染みだったみょうじなまえ、施設を出たあともよく会いに行っておしゃべりしてたんだけど、2006年2月22日、一人暮らししてる家に強盗が押し入ってきて殺されちゃうから悲しいね……

事件数日後にようやく自由に動けるようになったかくちゃんが「なまえにもイザナのことを報告に」……って待合室まで降りたら、朝刊に連続強盗傷害事件の被害者として写りの悪い卒業写真とともにその名前が載せられてて、朝刊がぐしゃぐしゃになるまで握り締めて俯きながらもう何も言えなくなっちゃうんだね……悲しいね……

三十路イザナの軸でもみょうじなまえは殺されてるから…… 「イザナの王国ってなまえも入れるの? なまえのこと、迎えに来てくれる?」「いつかな」の『いつか』が永遠に来ないまま、もうどこにもいないなまえを迎えに行く準備だけをずっとしているイザナクロカワ みょうじなまえはもう死んじゃったのに 悲しいね

「物語みたいな恋をして、結婚して、子どもを産んで、素敵なお母さんになるの。それで100歳まで生きるね」と笑っていたみょうじなまえは18の冬に呆気なく死んだし、みょうじなまえに「お前の面倒見れるやつなんてオレぐらいしかいねーだろ」と眉を下げて笑った黒川イザナも結局死ぬので、わりかしハッピーエンドと言えるかもしれん

二人とも最期は「自分が居なくても幸せになれるんだろうな」「なってくれるといいな」って思ってしまうんだけど、ハイパー運命カップルなのでほぼ同時刻に二人とも死んでる