三話
翌朝。
目が覚めると私は自分の部屋で寝ていた。いつ部屋に戻ってきたか覚えていない上、妙に頭が重い。昨日、浪士郎さんに会えたのは夢……ではない! 浪士郎さん! 浪士郎さんはどこ!?
急いで着替えを済まして部屋を出ると、何やら宿内が騒がしい。何かあったのだろうか。けれど今は浪士郎さんを探すのが先だ。
咲野屋を出るとちょうど半助くんと出会った。わざわざこちらに来てくれたらしい。呑気に挨拶をかましている場合じゃない。けれど私が口を開く前に、半助くんは慌てた様子で私の両肩を掴んだ。
「名前さんっ! ご無事でしたか!」
「そんなに慌ててどうしたの?」
「ここに来る途中、『咲野屋で人斬りがあった』という噂を聞いたので……良かった、お怪我は無いようですね」
「人斬り……?」
寝耳に水のような半助くんの言葉に私は顔をしかめた。すぐに踵を返して宿に戻り、忙しそうに働く女中さんを引き留めて話を伺う。
……どうやら、事件があったのは本当らしい。殺人現場は『桜の間』だという。その部屋は昨日浪士郎さんが泊まっていたはずだ。
慌てて桜の間に飛び込むと、そこにはおびただしい血の海が畳にじんわりと広がっていて、むせ返るような鉄の匂いにくらりとした。
「うわっ……これは酷いですね」
「昨日、浪士郎さんとここで会って話をしたの」
「浪士郎さんが居たんですか!? この宿に!? まさか、この血は……」
嫌な想像が頭を巡るが、色んな事が起こりすぎて考えがまとまらない。今でも昨夜の事は曖昧にしか思い出せない。けど、あの感触も温もりも私の体に残っている。私の体が覚えている。だからきっと、浪士郎さんと会えたのは本当なんだ。
「貴様ら、そこで何をしている!」
突然、背後から大声で叫ばれ、私と半助くんはビクリと体を揺らした。振り返るとそこに立っていたのは利発そうな1人の青年だった。その青年は自らを幕府の者と言った。この人なら事件について何か知っているかもしれない。
「関係者以外立ち入り禁止だぞ!」
「すみません、ここで殺された方はどなたですか?」
「教える筋はない。とっとと出て行け」
「お願いします、知り合いかもしれないんです!」
浪士郎さんは簡単に殺されるような人ではない。けれど、万が一という事もある。
懸命に頭を下げてお願いすると、青年は観念したように一息ついてから言った。
「ここで殺されたのは真島鉄之助という同心だ」
「同心……ですか? 犯人は……?」
「既に下手人は捕えた。同心による殺し、のはずだ。もう良いだろう、さあ出て行け」
言葉を濁しながらも、今度こそ部屋から追い出さんばかりに背中を押される。ふと上を見ると欄間が目に入った。この部屋も随分高い位置にあるものだ。そこに似合わぬ一筋の刀傷。……え? こんな高い所に刀傷?
もう一度確認しようとしたが再び背中を押されて欄間の向こう側へ、そして部屋の外へ追い出された。襖を閉められる前に目にした欄間は反対側から見るとおかめの面が飾ってあり、刀傷は見えなかった。
部屋の札を確認する。やはり『桜の間』で間違いない。……一体どうなっているんだろう。
昨夜の事を思い出してみる。確かに私は浪士郎さんと廊下でぶつかって、桜の間で話をした。
そして今までの事を話して、気持ちを打ち明けて、想いが通じ合って……でも浪士郎さんは仕事があるから、と私を突き放して、水をくれて……。そうだ、水を飲んでから眠くなったんだ。
「どうしたんですか、名前さん」
「あ、ううん。何でも……」
考え込んでいると半助くんが気に掛けてくれた。あまり良くない方向へ思考を巡らせていたみたいだ。自分の中で決めつける前に本人に聞かないと。
すると、隣の部屋の襖が開いた。そこから出てきたのは今まさに会わなければいけないと思っていた人物――浪士郎さんだった。私よりも先に半助くんが驚いて声をかける。
「ろ、浪士郎さん!? 本当に居るなんて!」
「なっ、お前ら!……チッ、だからさっさと宿を出ようとしてたのに、あの小僧ら……」
やっぱり浪士郎さんと再会したのは夢でも幻でも無かったんだ。浪士郎さんと再び会えたことに喜びを感じ、心臓が早鐘を打つ。しかし浪士郎さんはそうでもないらしく、バツが悪いと言った風だ。
「悪いがゆっくりと話している暇はない」
浪士郎さんはそのまま廊下を足早に歩いて行く。今度こそ逃がすものかと、私は追い付くような早さで駆け出した。浪士郎さんが出てきた部屋の札を横目でみると『百合の間』と書いてあった。……浪士郎さんの様子といい、やはり何かがおかしい。
「待って下さい!……浪士郎さん、あなたが同心の方を殺したんじゃないんですよね?」
「何を根拠にそう思う」
浪士郎さんは足を止め、背を向けたまま威圧するように言った。根拠も証拠もない。けれど、もしそうなら私が見たものや聞いたものと合点がいく。
浪士郎さんが言っていた『仕事』という言葉。確かに思い出した、私を邪魔だと言っていた事を。
貰った水を飲んだ直後に来た眠気。今朝の妙な頭痛が違和感として残っている。
高い位置にある欄間にあった刀傷。私が護身用に持っている脇差では到底届かないのだから、普通の刀でも無理だろう。
「浪士郎さんは昨夜の"仕事"の為に私を眠らせて、同心の方を……」
「…………」
「違うなら否定して下さい、お願いします!」
沈黙が廊下にいる全員を包み込む。浪士郎さんはゆっくりと振り返り、無表情でこちらを見た。夏なのに背筋がゾクリとし、鳥肌が立つ。
「……そうだ、俺が殺した」
浪士郎さんが、殺しを認めた。
何の感情も無く、そう言い放った。まるで、聞かれても構わないというように。いや、もしくは私達も殺すのだから聞いた所で問題ないという事だろうか。
「……もう俺に構うな」
しかし浪士郎さんは前へ向き直り、咲野屋を出て行った。
あの浪士郎さんが、人を殺す為に太刀を使ったのだ。もしかすると、これまで通ってきた町々でもそのような事をしてきたのだろうか。……いや、やはり信じられない。
「名前さん、どうするんですか?」
半助くんが尋ねる。どうするかなんてわからない。でもじゃあ、私は何の為にはるばる本所までやって来たのか。
……決まっている、全部浪士郎さんの為だ。私は決めたんだ、何があっても浪士郎さんの傍を離れないと。浪士郎さんの味方で居ると。
「行こう、半助くん!」
「はい!」
家を出て行く時の決意を取り戻したかのように、私は咲野屋を飛び出した。
浪士郎さん、あなたが罪を犯そうとも、もう独りになんてしない。きっと何か理由があるはずだ。
「待って下さい、浪士郎さ……」
浪士郎さんが角を曲がるのが見えたので同じように進むと、5・6人の浪人達が浪士郎さんの行く手を塞いでいた。全員が刀をこちらに向けている。
「だから構うなって言っただろうが……!」
浪士郎さんは苦々しく溢すと太刀を抜いた。この大人数を相手に戦うつもりなんだ。
「最初からこうするつもりだったってわけか。本当にツイてねえ……」
「浪士郎さん、私達も助太刀します!」
私と半助くんも刀を抜いて浪士郎さんに加勢する。しかし浪士郎さんは怒りの表情を滲ませて一蹴。
「馬鹿言え、とっとと逃げろ!」
「馬鹿を言ってるのは浪士郎さんです! もう絶対に見放すもんですか!」
私はまだ、浪士郎さんと半助くんと共に生き延びて、今度こそ皆で笑って暮らすんだ。
斬り合いが始まり、浪士郎さんと半助くんは私を庇うようにして敵の刀を弾き返す。守られているのは歯がゆいが、2人の邪魔をするわけにもいかない。
浪人が2人をかいくぐって私に近付く。振り下ろされた刀を脇差で受け止めるも、力の差は歴然で少しずつ押されてしまう。
「名前!」
浪士郎さんに名前を呼ばれるがそちらを向く余裕もない。私は浪士郎さんの足を引っ張ってばかりだ。今もこうして命の危険に曝されているくせに、……何が助太刀だ。
けれど私は、弱くても浪士郎さんの傍に居たい。
「貴様ら、何をしている!」
辺りに響き渡る凛とした声に、その場の全員が顔を向けた。
その声の主は先程、桜の間で会った幕府の役人である青年だった。
「白昼堂々斬り合いたあ関心しねえな、お前ら全員とっ捕まえてやる!」
「なっ……てめえら、ずらかるぞ!」
首領らしき男が指示すると浪人達は一斉に逃げ出した。四方八方に散り散りになるので流石に捕まえようもなく、青年は諦めて今度は私達に向き直ったので、私は頭を下げてお礼を告げる。
「助けて頂いてありがとうございました!」
「構わない。貴様は百合の間の浪人だな?」
「……チッ」
青年はすぐに浪士郎さんを捉えて詰め寄る。まさしく真犯人を見つけて捕まえようとする捕り物の目だった。
騒ぎが収束すると、青年の後ろから同じくらいの年齢の町人の男の子と女の子が現れた。
「浪士郎さん、あなたですね。鉄之助さんを殺したのは」
既に浪士郎さんは下手人と気付かれていたようだ。私と同じように欄間に付いた刀傷を指摘し、部屋の入れ替えの方法など、見事に浪士郎さんの偽装工作を見抜いたのだ。
ただの町人とは思えない洞察力に驚き、私は聞いていることしか出来なかった。
「ああ、その通りだ。俺があの同心を殺した。……あるお方に頼まれてな」
ついに浪士郎さんも彼らに対して罪を認めた。もしかして、そのまま裁かれて死ぬつもりなのだろうか。逃げようともしない浪士郎さんに不安が募る。
「"あるお方"? 貴様にそう指示した黒幕が居るというのか? 話せ」
「素直に教えたら俺は牢獄行き、そのまま切腹だろうが。情報をやるってんだ、賢く行こうぜ」
「貴様、下手人の癖して……」
「俺は幕府だの役人だのは好かん。全てを闇に葬ってここで腹掻っ捌いても良いんだぜ? だがな、俺が抱えているのはとんでもない大物だ、これを逃しちゃあ江戸の平和なんて今後も訪れんだろうな」
「くっ……仕方ない。望みはなんだ」
青年は顔を苦虫を噛み潰したような表情で浪士郎さんの言葉に頷いた。
まさか、お役人相手にここまでの啖呵を切るなんて。今までに見たことがない浪士郎さんの巧みな話術に改めて惚れ直してしまう……なんて思っている場合じゃない。浪士郎さんの望みって何だろう。
「俺を逃がせ。追うことも許さん」
「何だと!? 貴様の様な人殺しを野放しに出来るか!」
その大胆な要望に青年は声を荒げた。浪士郎さんはこの先も生きようとしている。私はそれが嬉しくて、失礼ながら口を挟む。
「すみません、私は名前と申します。浪士郎さんとは昔からの知り合いで……彼は決して理由なく誰かを傷付けるような人ではないんです」
「名前さん、ですか?」
町人らしき男の子が私の名を呟いた。男の子の名前は未来さん、女の子はおときちゃんと名乗り、自分の事を『タンテイ』と言った。聞いたことのない役職に首を傾けると、どうやら真実を見つける仕事らしい。曖昧な説明に更に謎が深まるばかりだ。
けれども、未来さんは不思議な雰囲気があって、まるでこの町の人ではないような……上手く言い表せないけど、私達とはまた違う存在のように思えた。
面識があるらしい浪士郎さんは、私を親指で差しながら説明する。
「小僧、俺が話した"藩を追われた理由"……それがコイツだ」
「どういう事ですか?」
「俺は以前、こいつの婚約者を斬った」
「う、嘘です! 浪士郎さんは斬っていません! あれはあの人が仕組んだ罠だったんです!」
更に疑いを深くするような発言は止めてほしい。私は浪士郎さんの言葉を遮って、これまでのいきさつを全て話した。
浪士郎さんは私の屋敷に仕えていたこと。
私と浪士郎さんは想い合っていたこと。
そして、父親に勝手に決められた婚約者に乱暴されそうになった所を浪士郎さんが助けてくれたことまでも。
未来さんは私の話を茶化すこと無く真剣に聞いてくれた。真っ直ぐに浪士郎さんを見つめるその瞳は、まるで真実のみを求めてやまないように見えた。
「浪士郎さん、本当の事を教えてください。あなたは名前さんを助ける為に、婚約者の方を斬り付けたんですか?」
今度こそ浪士郎さん自身が本当の事を話す番だ。固唾を呑んで見守っていると、浪士郎さんがごくりと喉を鳴らして薄く唇を開いた。
「……いや、違う。確かに俺は惚れた女を傷付けようとしたあの男を殺したいと思った。だが実際は峰打ちで済ませた。そうしたらあの男が自ら俺の刀に向かって来て、手前で腕を斬り付けたんだ」
「浪士郎さん……」
やっと浪士郎さんから聞きたかった言葉を聞けた気がする。あの時の事が鮮明に蘇ってきて、私は胸の奥がじわりと熱くなって、自然と目の前が滲んだ。
「あの男は、俺に斬られたと騒ぎ出し、捕らえられた俺は暇を出され、藩を出て行った。それから先の話はもう言っただろう。流浪の旅の末にここへ来た」
話し終えた後、浪士郎さんは大きく息を吐いた。けれど肩の荷が下りたような清々しさが見て取れる。この苦しみを今までずっと1人で抱え込んできたんだ、ほんの少しだろうけどすっきりしたに決まっている。
「おい、この浪人の話を信じるってのか?」
「はい、蒼次さん。僕は浪士郎さんの話を信じます」
蒼次さんと呼ばれた青年の言葉に、未来さんは即座に返事をした。
私と半助くん以外の誰かが浪士郎さんの味方になってくれる事が嬉しくて堪らなくて、目に溜まっていた涙がポロポロと零れ落ちた。
そして蒼次さんは浪士郎さんの条件を渋々と承諾し、私達は浪士郎さんの言う『あのお方』の元へと向かう事になった。
驚いた事に到着した先は旗本屋敷前。まさか将軍家直参の方が、浪士郎さんに殺しの依頼をしたなんて信じられなかった。黒幕の身分の高さに驚くと同時に、お偉い方からも腕前を見込まれるなんて流石浪士郎さんだ、と場違いながら尊敬の念を覚える。
更に中へ入るとそこは遠野家のお屋敷。浪士郎さんもお役人の方も門番や警護を押しのけてずんずんと中へ入っていくものだから、私や半助くん、未来さんたちは置いてかれないように付いて行った。
騒ぎを聞きつけて、黒い兜を被った威厳あふれる男性が屋敷から出てくる。面で顔が隠されてよく見えないが、その鋭い視線はまるで凍てつく刃のようだった。
「おや、これはこれはお揃いで。我が屋敷に何か御用かな?」
「とぼけるな、全部あんたが仕組んだって事はこちとらお見通しだ! 証拠は上がってんだ、神妙にお縄に付きやがれ!」
蒼次さんは声を張り上げて遠野に罪を問う。すでに屋敷の周りは蒼次さんが呼んだ仲間によって囲まれている。あらかじめ蒼次さんが「大捕り物だ」と仲間を引き連れて来てくれたのだ。
「だから浪人如きを使うのは嫌だったのだ。小癪な真似をしてくれたな」
「俺は役人は嫌いだが、裏切りはもっと嫌いなものでな。あんたの雇った浪人はそりゃあ使い物にならなかったぜ」
「もはや言葉は必要ない。皆の者、この無礼者共を生きて屋敷から帰すな!」
遠野の号令に、屋敷の外からも中からも刀を抜いた浪人達がやって来た。敵が動き出したと同時に、屋敷内にも役人や同心が勢い良く飛び込んでくる。
浪士郎さん達が何とか応戦する中、未来さんが袂から花火玉を取り出して地面に叩きつけた。大きな音と共に火花が散り、白い煙がもくもくと辺り一面に広がる。もはや一寸先も見えない。
「きゃあっ!?」
周りの困惑する声が耳に入る中、私は腕を掴まれて引っ張られ、先の見えぬ道へと連れ去られた。
***
人通りの少ない街道。たまにすれ違うのは活気あふれる商人や和やかな旅人達。
道に生えている雑草をさくさくと踏み分けながら、私と半助くん、そして浪士郎さんは日本橋に背を向けて歩いていた。
「本当に逃げて良かったんですか?」
「あのまま屋敷に残っていたら俺まで牢獄行きだ。ああは言ったが、同心殺しをそう簡単に見逃してはくれんだろう」
遠野家での大騒動の中、浪士郎さんは私と半助くんを引っ張ってここまで連れて来てくれた。今頃どうなっていることやら。多分、遠野家は終わりだろう。
「さすが浪士郎さん! やることなすこと格好良いですね!」
「半助、お前もまだ付いてくるのか?」
半助くんは浪士郎さんの問いに、胸に拳をあてて意気揚々と答える。
「当たり前ですよ! 僕はもっと沢山のことを教えて貰いたいんですから」
「私もずーっと付いていきますからね!」
「フン、好きにしろ」
浪士郎さんは悪態をつきながらもどことなく嬉しそうだ。蒼次さんには少し罪悪感を感じるけど、浪士郎さんはとてもスッキリした顔をしているので私は満足だ。
「そんなに冷たい態度をとっても無駄ですよ。一生忘れませんから! 浪士郎さんが私の事を『惚れた女――」
「おいやめろ! わかったからやめろ!」
慌てて私の口を押さえる浪士郎さん。その大きな手に自分の手を添えて、優しく握る。
やっと、こうして浪士郎さんに触れられる。誰にも咎められずに、いつまでも貴方を見ていられる。そう思うと嬉しくて、勝手に口端が上がってしまう。
浪士郎さんが隙を見せた一瞬に、私は背伸びをして――彼の唇に、自分のそれを押し付けた。
触れるだけに接吻をし、焦る浪士郎さんに向けて私は笑みを浮かべる。
「お、お前……!」
「浪士郎さんがそう言ってくれて、すっごく嬉しかったです」
「……フン、当たり前だろ」
「ぼ、僕、見ちゃって良かったんですかね……?」
2人してハッとし、傍に居た半助くんの存在を思い出す。私ってば、いくら嬉しかったからって人前でなんて大胆な事を。
「半助くん、こ、これはその……!」
「大丈夫です! 浪士郎さんも名前さんに会えて嬉しそうですから。屋敷に居た時よりもずっと――」
「半助、ちょっと黙ってろ」
「あうっ、すみません!」
今度は半助くんの頭を手の側面で叩く浪士郎さん。照れると手が出ちゃうのかな、この人。
「で、浪士郎さん。これからどうするんですか?」
「さあて。風の吹くまま気の向くまま、だな」
そう言って浪士郎さんは私達と共に歩いて行く。
風の吹くまま気の向くまま、誰が為に道は在る。
花は咲けどもいつか散る、世は常に移ろいゆく。
それでも、さあ。
有為の奥山、今日も越えて。
有為の奥山けふ越えて
(20170120)
[
←
|
back
]
Smotherd mate