005-1(1/3)


「……いない」

「? そうね。結構奥まで来てるはずだけど、チーグルの姿はないわね」

「…うん。エンゲーブと行ったり来たりしてるくらいだから、一匹くらいは見掛けると思ったんだけど…」


チーグルもだけど、イオンもだ。

なかなか起きなかったルークを急かしながら少し早めに出たつもりではいたんだけど。そろそろ出くわしてもいい頃だ。

……まさかもうダアト式譜術使ったりなんて…してないよね…?



005
『Ray of hope』



「…」


ルークとティアが戦闘態勢に入る前に、こちらに向かってくる魔物の集団に拳銃の弾を撃ち込んで音素に還す作業をどれくらい続けているだろうか。

流石に飽きてきたというか、なんというか。

入口付近で見掛けるはずのチーグルと、そろそろ出会うはずのイオンを見つけられないのにどうもモヤモヤしてしまう。

……あれ? そろそろ、とか、なんで…?


「おい、急に立ち止まってどうしたんだよ?」

「あ…、ごめん」

「何か見つけたの?」

「…えーっと、………あっ!!」


−−僅かに。僅かに、遠くの方で第七音素が集束したのを感じ取った。

間違いない、この感じはイオンだ。
きっとウルフに襲われて譜術を使おうとしてる。
そう認識した瞬間、堪らず地面を思い切り蹴って駆け出した。

ふたりが私を追い掛けながら制止の言葉をかけてくるけど、ごめん、今は反応できそうにない。

走りながら念のため片手剣を手にして、イオンの気配を辿る。
多分、もうすぐそこにいるはずだ。

と、そこで先に耳にしたのは多数のウルフの唸り声。続けて視界に入った見知った少年。

…ギリギリセーフ?


「ッ、イオン!!」

「! カノン…!」

「目ェ瞑ってて!」


ウルフに囲まれたイオンが頷きながら目を閉じたのを確認して、身体の中の第三音素を右手に溜める。

−−唸れ旋風。


「サイクロン!」

「……ッ」


ゴォオッと音を立てながら発生した竜巻によってイオンの周りのウルフは一瞬で音素へと還った。
因みに味方識別とかいうのをどうとかしたからイオンには当たっていない。

ホッと息を吐きながら、座り込んだイオンのもとに駆け寄る。


「イオン、大丈夫? 怪我はない?」

「はい。ありがとうございます。カノン」


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