005-2(2/3)
「ライガの住処ってこの先なのよね?」
「そうですの。この川を渡った先ですの」
あれから、追いかけてきたルークとティアに叱られながらイオンが此処にきた目的なんかを聞いたりして、チーグルの住処を目指した。
すぐにチーグルを見掛けて追い掛けたはいいものの、その途中で魔物と戦ってチーグルを見失ったり…まぁ、そんなこんなでなんとかチーグルの住処に辿りついて、チーグル族の長老と話をすることができた。
食べ物を盗んでいたのはやっぱり草食獣のチーグルで、盗んだそれはこの森に移り住んだライガ・クイーンの元へと届けられているらしい。
何故ライガ・クイーン達がこの森に移り住んだのかと言えば、どういう訳かあたしのフードの中に収まっているチーグルの幼獣、ミュウが原因だ。
ミュウは仔供ながらに火を吐くことができて、ライガ・クイーン達が元々暮らしていた森を火事にしてしまったんだとか。
それでライガ・クイーンはチーグルを餌にしようとしたみたいなんだけど、チーグルは当然それを拒否。
その交換条件としてエンゲーブの食物庫から食べ物を盗んでいたという、なんというか、魔物も大変なんだなぁ、なんて話だ。
ということで、ミュウを引き連れてライガ・クイーン達にこの森から去ってもらうよう交渉することになった。
彼女達がこの森を去ればチーグル達は盗みもしなくてもいいし、食われることもない。
そして人間もなんの被害もない。
人間とチーグルの利害が一致したわけだ。
…尤も、ライガ達の納得のいく条件は見つけ出せていないのが現状なのだが…。
「川を渡るっていっても、橋が架かってねぇじゃん」
「仕方ありませんね。川の中を歩きましょう」
イオンがそう言うと、ルークは露骨に嫌な表情をした。
…まぁ、分かるよ。できるだけ身体を汚したくはないよね。
一般市民(仮)のあたしでもそう思うくらいだもん、貴族のルークはそれ以上のものがあるのだろう。
軟禁云々がなかったとしてもこんな体験することなんてなかったろうし。……まぁ、ちょっと我が儘な所はあるとは思うけど。
「マジかよ…。靴もズボンも濡れるじゃねぇか。俺はイヤだね」
「それならあなたはここに残るといいわ。服や靴の汚れを気にする人は足でまといになるから」
「…なんだと!?」
喧嘩が始まりそうだ。
ここに来るって言い出したのはルークなんだからティアの言うことも一理あるけど、でも、なぁ……。
川の向こう側を見ながら記憶を辿って、見覚えのある木を探す。………あ。あった。
ガサゴソとバッグの中から投刃を取り出して、それを思い切り振りかぶって木の根本を目掛けて投げた。
そうして綺麗な放物線を描きながら返ってきた投刃をしまいながら、こちらに倒れてきた木を見下ろしてちょっとドヤ顔をしてしまう。
「カノンさんすごいですの!」
「えへへ*」
フードの中のミュウが手をぶんぶん振りながら喜ぶもんだから、それが可愛くて尚更顔が緩んでしまう。イオンとティアも褒めてくれたし。
これが役得ってやつ? ちょっと嬉しい。
…まぁ、このまま手を出さなくても良かったんだけど……。
チラッとルークを見ると、眉根をきゅっと寄せた何とも言えない表情をしていた。思わず、ぱち、と瞬きをしてしまう。
…って、あ。早くライガ・クイーンのところに行かなきゃ。ジェイドに先を越されちゃあ説得なんて出来やしない。
「さ、早く行こ!」
「行くですの!」
「…るせぇ! ブタザル!」
「みゅうぅぅ……」
元気よく乗ってくれたミュウが今度は項垂れてしまって、苦笑いをする。
もしかしてルーク、木に気付いてたのかな。手柄を取られちゃって不機嫌、とか…?
…と、とんでもないことをしてしまった。次からは気を付けよう…。
と、心の中で深く反省しながら、よろけそうになっているイオンの手を取って木の上を歩いた。
………ライガ・クイーンと、交渉。上手くいくかな。
意外にも大きいイオンの手をぎゅっと握り締めながら、少し、最深部へと向かう足を早めた。
ーー大丈夫、大丈夫。
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