義勇さんとクリスマス

「雪が降ってる」
「ほんとう?」
「ほとんど雨だが」

布団に埋まっている両手を掘り起こして首に巻きつくと、薄い毛布といっしょにかき寄せられて、そのまままるごと抱き上げられた。
みのむしみたいにむくむくしたかたまりから、細い腕と白い足が奇妙にひょろりと伸びていて、そのてっぺんに、眠たそうな瞳をとろとろまたたかせているわたしの顔が乗っているのが、そしてその珍妙ないきものを義勇さんがたいせつそうに横向けに抱いているのが、クローゼットに作り付けられた姿見に映っている。
義勇さんがひと足進めるたび、メランシカ素材のなめらかな布地が肌を撫でてこころよく、寝起きのぼんやりとした意識もあいまって、うっとりと夢をみるような気分だった。

「メリークリスマス」
「メリークリスマス、義勇さん」

みぞれはほとんどぐずぐずの雨のようで、まばらに降るだけだったけれど、ふたりで見るならば、これは立派なホワイトクリスマスだった。

毛布が半分ずり落ちて、ふとももが冷気にさらされる。守り隠すようにぎゅうと強く抱きすくめられて、額に長めのキスがあった。あやすように左右に揺られて、わたしはきゃらきゃらと笑いながら頬擦りをする。

雪はいつのまにか止んでいた。
義勇さんはわたしをベッドへおろすと、一度離れて、また寝室へ戻ってきた。どうっと水の流れる音が聞こえる。冬の休日のごきげんな朝は、バスタイムからはじまると決まっている。
たっぷりとしたキスがなされる。
今日もわたしたちの一日には、とびきりの幸福が約束されている。