プリムラ

「ジャージ」

うなじに顔をうずめて鼻を寄せてから、背中に頬ずりをする。布越しでもわかるしっかりとした背骨がわたしの頬にやわく食い込んでいく。
上までファスナーをしめたやや光沢のある生地が描くしわの、たっぷりとした曲線がすきだ。色は断然、しろがいいに決まっている。
上着の重たい裾を持ち上げて骨ばった腰元を触るのがすきだ。そのとき手首にあたるメリヤス編みニットの、すべすべとした感触も。

「おまえのおかげで、おれのジャージはいつもファンデーションまみれだ」
「マーキングです」
「悪趣味」
「すきなの」
「ジャージが?」
「ジャージを着ている義勇さんが」

そのまま頬を滑らせて、腰骨から仙骨、尾てい骨のあたりまでくちづけを落としてみたり鼻先を押し当てながら下りていく。
そっと腕をまわしてかたい熱を確かめてから正面へとまわりこみ、その股座にくちびるを寄せる。ルースパウダーのラメがしろい布地に移って、ちらちらとひかる。
長く骨ばった親指がわたしのおでこを撫で上げた。
恍惚にとろけたわたしの顔を見やると、義勇さんはちいさく笑った。ひくりと脈打つ熱に応えるようにキスをする。
怠惰と社会活動とのあいだのクレバスは、今日も深い愛で満ちている。


(1月 プリムラ 青春の恋)