日吉若side


「Eー!がっくん、好きな子居るのー!?」

「がっくん言うな!!別に好きとかじゃねぇよ!」

「でも、気になってるんでしょ?」

「…まぁ。」

相変わらず騒がしい人たちだな、と小さくため息を吐き、制服に袖を通す。部活終わりのレギュラー部員の部室。騒がしい先輩たちの言葉を聞き流していれば、先輩である芥川さんが声を張り上げた。どうやら、向日さんに好きな奴が出来たらしい。そのことで、忍足さんと芥川さんが盛り上がっている。
阿呆らしい。先程と同様、ため息を吐いた。とりあえず、帰ろう。巻き込まれる前に。ロッカーを閉め、カバンを持ち上げる。すると、俺が帰るのが横目に見えたのだろう。忍足さんが口を開いた。

「日吉も気になるやろ?岳人の好きな子。」

「興味ありません。」

「なんでや!そこはもうちょい、興味持つとこやろ、!」

「知りません、!離してくださいよ!」

急な問いかけにすかさず応え、横切るも、制服の裾を掴まれてしまった。制服が、伸びる!苛立ちを募らせるも、冷静に忍足さんとの攻防戦を続ける。そんな俺たちのやり取りは無視なのか、芥川さんは向日さんと盛り上がっているし、こちらの様子を見ていた宍戸さんは呆れたようにため息を吐き、鳳は苦笑いを零していた。
見てないで、この人を引き剥がしてくれないだろうか。お互い、全力で身体に力を入れる。そんな中、芥川さんが声を上げた。

「ねぇねぇ!明日のお昼休みに、がっくんの好きな子見に行こうよ!」

「あ、ええやん。」

「うわあっ!」

芥川さんの提案に賛同した忍足さんは、唐突に俺の制服の裾を離した。急な出来事に、俺の身体は前へと傾き、床へと倒れた。「あ、すまん日吉。」なんて図上から聞こえた後、「何やってんだよ。」と、向日さんたちの笑い声が続いた。ああ、なんでこんな人たちが先輩なんだろう。小さくため息を吐き、体を起き上がらせて入れば、部室の扉が開く。図上を見上げれば、部長である跡部さんがいた。

「アーン?日吉、何してんだ。」

「いえ。気にしないでください。」

「お前ら、早く帰れ。そろそろ、門が閉まるぞ。」

「やべっ!」

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