綾部喜八郎side
ある日、天女様と名乗る女が天から舞い降りて来たそうな。その天女様は、五年生と六年生にちやほやされていたのに、何故かぱったりと消息を絶った。先生方は、間者だったのではないかと言っていたけれど、その割には天女様は学園のことを探るような言動、行動はしていなかった。そういえば、僕には関係ないのだけど、三年生の伊賀崎孫兵が元気がないらしい。関係ないけど。それから、数日経った今日。またもや、天女様が天から舞い降りてきた。二人目の天女様かぁ…。興味ないけどな。なんて思っていたのに。はじめて天女様を見た時、身体中が熱くなったんだ。心臓が高鳴り、胸が苦しくなり、ドクンドクンと鼓動が速くなるのを感じた。それからの僕の行動は、可笑しかったかもしれない。主に、四年生だけで天女様をちやほやしていて、僕達は委員会活動にすら参加をしなかった。 そういえば、二人目の天女様の笑顔はどことなく事務員さんに似ている気がする。事務員の小花衣さんは、よく僕の蛸壷に落ちていたなぁ。数日前のことなのに、懐かしく感じる。彼女は蛸壷に落ちては、「また落ちちゃった。」と言って、はにかんでいた。あの笑顔が、また見たくて見たくて、何度も蛸壷をわざと仕掛けていた。それをきっと彼女は、知っていたと思う。それでも僕を怒ることはせず、「また落ちちゃった。」と言って笑っていたんだろうな。ああ、彼女のあの笑顔が、また見たいな。天女様も、笑ってくれるかな。彼女が居なくなったのを期に、僕は蛸壷掘りをやめていたのだけど、また彼女の笑顔が見たくなったので掘ることを決意した。例え本物の彼女じゃなくても、天女様が笑ってくれればいいから、まぁいいか。翌日、僕は天女様を裏裏山に呼び出し、蛸壷へと落ちるように仕向けた。天女様は僕の思惑通り、蛸壷へと落ちたのだけど。彼女が笑うことはなかった。怒りに満ちた瞳で、僕へと怒声を上げた。そして僕は、気づいてしまったのだ。彼女、天女様ではなく事務員をしていた小花衣咲さんのことを好いていたのだということを。なぁーんだ。そっか。それじゃあもう、天女様なんかイラナイヤ。
「ちょっと聞いて、きゃあっ!何すんのよ!?土がかかったじゃない!」
「アナタは、ニセモノだから、要りません。」
「は、なに、ちょっと、埋めるつもりじゃないでしょうね!?」
「ニセモノは要らないので、埋めます。僕、血まみれにはなりたくないし。」
「やだ、やめてっ、ねえ、きはちろ…!」
「喜八郎くん。」
「名前で呼んでいいのは、彼女だけです。」
「やだ、いや、助けてっ…、」
「…お帰りください、天女様。」
僕のその言葉を最後に、天女様は土の中に埋もれていってしまいましたとさ。
「めでたし、めでたし。」
小花衣さんの笑顔を思い出す度に、胸が締め付けられて苦しい。空を見上げて、小さく嗚咽を洩らした。
二人目の天女様