メーデーメーデー

「店長!ミズキ!!リンダとジェミニ来てない?!」
「……来てねえけど、どうした?」

17時少し前、ディナータイムの準備を進めている時だった。
バンと店の扉を勢いよく開けて双子の姉であるレーラが店へと入ってきた。
今日は彼女は休みで、姉弟3人で家で過ごしているはず。
その彼女が血相を変えて汗もかいている。
肩で息をしながらカウンターの方までレーラは近寄ってくる。
おれの言葉を聞くと彼女はそこにへたり込んでしまった。

「…リンダとジェミニになんかあったのか?」
「……いないの……あの子たちがどこにもいないのっ…!」
「なんだって?!」

おれと店長の声が重なった。

「町の人にも聞いたし、よく行く場所も探したわ!でもどこにもいなくて…!」

レーラは両手で顔を覆い泣き崩れてしまう。

「どうしよう!!わたしのせいだ…!わたしが理由も聞かず怒っちゃったから…‼」

彼女はもうすぐ誕生日を迎える。リンダとジェミニは何やら2人でプレゼントを用意していたらしい。手作りっぽくて、よく作業に夢中になりいつも昼飯を食べに来る時間になっても来ない時があった。おれがローに勧誘された日もそうだった。
レーラに情報が漏れるのを避けるために店長やおれにも教えてわくれなかったほどだ。
聞いてみたら「なぁーいしょ」と返されるのだから可愛い。
おっといまはそれどころではなかった。
日も暮れてくるし早いところ2人を見つけなければならないのだ。
行方不明になる子供が続出しているし、人攫いになんてあったらたまったものではない。

「店長はレーラを見ててください」
「……ああ」
「おれが2人を探してくる」
「そんな、わたしも…!」
「レーラはここで待っててくれ。必ず2人をつれてかえってくるから、その間に仲直りの言葉を考えていたらどうだ?」
「ミズキ……」

おれと店長は顔を見合わせて頷く。
エプロンをカウンターの椅子にかけておれは店を後にした。

★☆

店の裏口、レーラも探したと言っていた双子がいつも行く場所、2人がいきそうな場所を片っ端から探した。
時には町のやつにも聞いたり、ハートのクルーにも聞いたりした。
けれどどこにも2人の姿はなかった。

「ハァ…どこ行きやがった…!」

気付いたら海岸まできていた。膝に手をつきながら呼吸を整える。漁船が多くある港の方ではなくあまり人気の少ない海岸。海賊船もちらほらと見せる。
海風が頬に当たって気持ちい。
ないと思いたいが海賊に捕まっている可能性だってある。
一つ一つ見ていくか。

「それにしても珍しい色だったよな」

どこからか聞こえた声に立ち止まる。

「ああ、あのガキどもだろ」
「あんなに色素の薄い髪を見るのも初めてだったよなァ」
「あァ、プラチナブロンドっつうんだったか?」
「相手が奴らじゃなかったら手元においときたかったんだがなァ」
「男の方だけ差し渡して女の方は手許においときゃよかったじゃないですか」

ギャハハと笑い声が聞こえてくる。おれは声がする方へ走り出した。
色素の薄い髪。プラチナブロンドとも呼ばれる髪色をしているのはこの島ではいまおれが探している双子と店で店長と留守番しているレーラだけだ。
声は海賊船の方からした。
自慢の足で軽々と登っていく。

「おい、その2人をどうした」
「あァん?んだお前」
「リンダとジェミニをどこにやったんだと聞いてんだ、このクソ海賊ども‼」

正大に喧嘩をふっかけ全員ぶちのめした。
全員気絶させちゃあ情報が聞き出せないので、船長っぽいやつを口が聞ける程度に留めておいた。

「で?2人はどこだ」
「か、海軍です…」
「海軍?」

嫌な予感というかなんというか、1ヶ月前に赴任してきた海軍の大佐は所謂裏の人間というやつと繋がっていた。ここら辺いに停泊している海賊に見逃すかわりに子供を誘拐するよう脅していたらしい。しかも報酬付き。
黒幕が海軍じゃあ、話を掛け合ったって無駄だったわけだ。
けど、これで2人の居場所はわかった。
ある程度情報を船長っぽい奴から奪うと蹴り上げて気絶させる。

「ミズキ」

船を降りると誰かが立っていた。
ロー、ベポ、シャチ、それからペンギン。
先程双子のことを聞きに行った時にはいなかったはずだが。

「あの双子が誘拐されたんだってな」
「ああ。相手は海軍だ」
「正義を掲げてる奴が人攫いとか、世も末だな」
「今更だろ」
「ミズキ!おれもリンダとジェミニ助けるの手伝う!」

ベポの言葉はありがたいが、その前に気になることがある。

「……なんだ」
「海軍は海賊を見逃すかわりに人攫いをしろと言っていたらしい」
「おれを疑ってるのか?」
「なんだそれ?!そんな話聞いたことねえぞ」
「そもそも俺たちが乗っていた船はここに停めちゃいない」
「俺たちはシロだ」

まあ、おれもこいつらがそんなことをするようには思えない。
けれど素直にこいつらに協力を求めるのもシャクだった。
素直に言って2人を返してくれるわけなんてないし、そうなってくると忍び込むしかなくなる。おれの能力が有れば忍び込むなんて苦ではない。
一息ついておれは海軍の基地がある方へ足を向ける。

「おいっ俺たちも手伝うって」
「別におれは頼んでないし、勝手にしろ」

それだけ言うとおれは今度こそ海軍基地に向けて走り出した。


[back][top]