現在口説かれ中
「ミズキ、来たよー」
「よお」
「……また来たの」
「お前を口説くためだからな」
目元にクマを飼っている彼はニヤリと笑った。
おれが海賊に勧誘されたあの日から、この店の昼時には白地におれが勧誘を受けた海賊旗のマークをつけたツナギをきた奴らがちらほらとくるようになった。
今日はローとベポ。
ベポ、シャチ、勧誘された次の日の昼時にこの2人?がきて自己紹介された。そして日替わりランチをカウンターで食べていった。途中から船長であるローとペンギン(自己紹介された)も合流。やっぱりお前の飯はうまいな、なんていってそのあとうんうんと同調して、特にあれがうまいとかこれが好きとかいって口説かれた。
次の日には別の人が来て、自己紹介されて、日替わりランチを頼み、口説かれる。それが2、3日ほど続いた。
もうすぐ船が完成する、と言っていたから出航の日も近いのだろう。
素直に自分が作ったものを褒められるのは嬉しいのだがおれはまだ海賊になるかどうか決めかねている。
「日替わりランチ3つ」
「3つ?」
「シャチが荷物を置きにいってて、後から来るんだ」
「なるほど」
「待ってる間に来るだろ」
「かしこましました」
定位置になりつつあるカウンターに座りながら会話する。
水とお絞りをとりあえず2人分出し、おれは注文された料理に取り掛かる。
昼時に備えて味噌汁は作ってあるためメインとなる料理へと取り掛かる。
今日は朝市で仕入れた魚だ。
予め捌いておいた切り身にした味をつけて小麦粉をつける。
「あ、シャチ」
「ご苦労だったな」
「はい。あ、注文…」
「もうしてある」
「さっすが船長」
ローの隣に座りながらシャチがこちらに視線を向けてきたため、おれは軽く手を振る。
熱したフライパンにバターを。そこに3切れ並べる。
この世界で生きるようになって、海賊も海軍もやってることはそんな変わんねぇな、なんて思うようになった。だからまあ、この人たちの仲間になるのは別に嫌では無い。
こんなにおれの料理を褒めてくれるんだし、店の中でも常識ある振る舞いだし悪い奴らでは無いと思う。
ではなぜ渋っているのか。
今この島で起きている問題があるからだ。
ここ1ヶ月ほど、子供が行方不明になっている。丁度双子と同じくらいの年齢の子供たちばかりだ。おれが住んでいる町ではまだ無いが、隣町やその隣の街なんかでは話が上がっているのだ。もう10人近くなる。
人攫いにあったのではないか、なんていう噂もある。この世界では人身売買なんてよくあるらしいし、なんなら奴隷もいる。胸糞悪いことに。天竜人なんてクソみたいなやつもいる。口には出さないけど。
だからここ最近では必ず子供だけにならないように大人たちがついているのだ。
懸念されるのはここによく来る双子とその姉。昼間は人が多く出ているから見てくれている大人もいるが夕方から夜にかけてはそうもいかない。
人が多いうちに家に帰る時はいいが遊びたい盛りの子供である。
おれが見かけて家まで送っていくこともあれば、店でおやつを食べながら姉を待つ時もある。
こういう日々が数日続いているのだ。
おれは、この問題が解決しないまま島を出るのは無理だと思っている。心配で出ていけるかっつの。
ここ1ヶ月、変わったことがあるとしたら島に駐屯している海軍の大佐が代わったことだろうか。……まさかな。