キラキラよ消えないで

兄はよく笑うのに、お前は全然笑わないな。
なんてことをよく言われる。
笑っているつもりなんだけどなぁ…。
表情筋が働いてくれないのだ。
けれども流石双子、と言ったところだろうか。ルフィだけは察してくれる。
鉱物の魚が出た時、勝負をして勝った時、楽しい時。
よかったな!って笑うのだ。
仲間にはえ?って顔をされるけど、その後に流石双子と呟いている。
閑話休題
レストランであったキラキラのお兄さん、基サンジが仲間になった。
詳細については重症のゾロを連れてウソップたちとナミを追っていたためわからないけれど、仲間が増えたことはいいことだ。
同じ女でも、ナミやビビとは対応が違うけれど…。
痴女、なんて言われたのはあれ一回でわたしが能力者だと知るとよくクソネコと言われるようになった。虎なんだけど。クソつけんな馬鹿。
ココヤシ村でルフィがアーロンをぶっ飛ばし、ナミも帰ってきた。
よかったよかった。
ローグタウンでルフィがバギーに殺されそうになっていた時はしばらく側を離れなかったけど、無事偉大なる航路へと私たちが乗るゴーイングメリー号は船を進めたのだ。
サンジは相変わらずキラキラしている。
なんだっけ、これ。前にもあった気がする。

「エルさん、よくサンジさんのこと見てる」
「え、そう?」
「ええ。食事中とかふとした時とか」

甲板から海を眺めていた時ビビに言われた。
サンジを見てるって…キラキラを追っていただけなんだけどな。

「もしかして、無意識だった?」
「……多分ね。だってサンジ、なんだかキラキラしてて」
「キラキラ?」
「そう」

ビビがえ?みたいな顔をこちらに向けている。ゾロよりひどくないけど驚いている顔だ。
腹減った〜とルフィにすがりつかれているサンジを見る。
やっぱりキラキラしている。金色の髪も相まって一層キラキラしている。

「……わたしにはサンジさんがキラキラして見えないけれど…」
「え、そうなの?」

みんなそうだと思ってた。
ビビが微妙そうな顔しながら頷く。なんで。
そういえば、前もこんなことあったなぁ…。前はエースだったけど。

「…エルさんは、サンジさんに恋してるのね」
「……こい?鯉?」
「…そのこいじゃないわ」
「…なんでわかったの」
「ルフィさんの妹だもの…」

解せぬ。
じゃあこいとはなんだというのだ。
他のこい……。
濃い、故意、恋…。恋?

「ビビ、こういうことをおれたちが言うのは野暮ってもだぜ」
「ウソップさん、気づいていたの?」

どこから出たウソップ。
お前さっきまでルフィとチョッパーと一緒にサンジにすがり付いてただろ。

「まあ何度も横でキラキラしてるーなんて言われりゃあな…」

なんで得意げなんだ。

「そうよね、やっぱりそう言うことよね…」
「ああ、そういうことだ…」

なんでわたしのことなのに2人の方が分かってますみたいなことになってんだ。
わたしのことだぞ。…でも前にもこんなことあったな…。

『こう言うのを俺たちが言うのは野暮ってもんだろ』
『え〜なんだよそれ』
『エルはーーがすきなんだろ?』
『すき?』
『ばっかっルフィ!!』

ああ、そうか。わたしはサンジが好きなのか。
自覚した途端に全身の熱が顔に集中した。
暑い。わたし多分今顔真っ赤だ。

「〜〜〜!!!」
「……エルの表情がここまで変わるの珍しいけど、これ自覚したか?」
「…そうみたいね」

なんていうビビとウソップの会話なんてわたしの耳に入ることはなく。
このリンゴみたいな顔を他のみんなに知られるのは嫌で、わたしは猫型になって逃走した。
虎だけどね。
この感情は2回目だ。前はわたしの兄に恋をした。
自覚したのは兄弟になる前。血は繋がってないから告白だってできた。
でもしなかった。…いや、出来なかった。
だって彼は、サボは。しんでしまったから。
もう二度と、わたしの好きな人が死ぬなんてことになって欲しくないなぁ…。
わたしは海風で熱った顔を冷やしながらサンジを見つめた。



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