お誘い
「何してんだ?」
「十朱さんが体調が悪いんだけど彼女がいつものことだからって…よくよく聞いたらINFERNO全員そうなんだって言うんだ…」
「毎月のことだから大丈夫だって言ってるの。」
「…あー。」
どうやら彼は、八乙女楽は察してくれたようだ。
気まずそうにちらちら奏子を見て、目が合うとすまなそうな表情をした。少し離れたところにいる九条天も少し呆れたようにしている。
「一ヶ月に一回、なの。これ以上言わせるつもり?」
「一ヶ月に…あ。」
「気付いた?」
桜子のその言葉に何か気付いた彼は途端に顔を真っ赤にして頭を抱えた。そんな様子を見て堪え切れなかったのかけらけらと笑いだしたのは言うまでもなく燈子だった。
「あっはははは!この人本当に十さん?随分と鈍感なようだけど、これが巷で大人気のセクシーワイルドな十さん?」
「あ、いや…それは社長からそういうキャラでいけって言われてて…」
「あー…そういうこと。」
「演技派〜!」
「それよりごめん!俺…えっと…」
「…いいえ、私は嬉しかったです。ほぼ二度目ましての私にあそこまで親身になってくれて。」
「十朱さん…」
「ありがとうございます、十さん。」
まだ少し顔色はよくないけれど、眉間のしわがとれた彼女の表情を見て龍は胸を撫で下ろした。もう大丈夫?と聞くとだいぶ楽になりましたと笑う。よかったと龍も笑うと奏子はそうだ、と肩にかけていたジャケットを龍に差し出した。
「ありがとうございました。」
「いえ。こんなことしか出来なくてごめんね。」
「いや!あの、えっと…とても温かかったです。」
「そっか。ならよかった。」
テレビのイメージとは違って、とても優しそうな笑顔だった。さっき言っていた"社長に押し付けられたキャラクター"とは真逆な人なんだろう。いつかそれが命取りにならなければいい、そう思いながら奏子は龍の顔をじっと見つめる。
「あの…?」
「あ、ごめんなさい。テレビのイメージと正反対で、すごいなぁって。」
「すごい?」
「燈子ちゃんも言ってたけど、十さんは演技派ですね。」
「ねぇねぇ奏子ちゃん!この子、九条さんのとこの子なんだって!あの、九条鷹匡さん!」
「え?あの九条さん?」
「そう!ね、九条くん!」
「はい。」
「私達ね、九条さんには借りがあってね。」
「借り…?」
「まあまあ、こんなとこで立ち話もあれだし…桜子、奏子ちゃん!」
「別に構わないけど。」
「賛成!一回ゆっくりお話ししてみたかったの。」
「決まり!ねえ、TRIGGERさん。お仕事終わってるんでしょ?良ければご飯でもどう?同じ事務所のよしみってことで。」
「僕は帰ります。仕事が終わったってことはプライベートでしょう。そこまで会社の人間といる必要はないと思いますけど。」
「ええー、先輩からのお誘いだよ?それにほら、私は九条くんのファンだし?ファンを大切にしてよ?」
「…嘘っぽい。」
「諦めろ、天。先輩にここまで言われて断れねぇだろ。」
「燈子は一度決めたらしつこいから諦めた方がいいと思う。」
「…少しだけですよ。」
「うんうん。十分です。」
じゃあ、行きましょー!と燈子は携帯をとりだしてタクシーを呼んだ。最初の出会いから1年が経とうとしていた。