夫が、死んだ。
関ヶ原の戦いで、徳川率いる東軍に負け、つい先程六条河原にて処刑された。
身寄りのない私を引き取ってくださり、室にまでしていただき、生きる意味を与えてくださった夫の死。
徳川家康は、私と子供を殺す気は無いと言っている。
だが、夫の居ないこれから生活など、考えられなかった。

「三成様、」

なんだ、とこちらを見ずに執務を続ける三成様の姿が。

「刑部殿」

ヒヒッ、と笑う刑部殿の姿が。

「左近」

はいっ!と元気よく返事をする左近の姿が。


もうどこにも、見当たらない。

これからの石田家のことはすべて次男に任せる、そう書き記し、私は待ち合わせ場所へ急いで向かった。


「地獄にて、待つ」