いつだって俺様は抜かりのない男だ。
部屋はいつだって綺麗にしてあるし、料理も出来る。割と抜けているところのある名前ちゃんを支え、エスコートして、常に年上らしく振舞ってきた。
「佐助さん、気持ち悪いです」
…振舞ってきたつもりだった。
「ど、どうしたの、急に」
「いつもかっこいいですよ、すごく好きです。でも……これはさすがに趣味が悪すぎます」
そう言って指をさした先にあったのは、先日レンタルビデオショップにて同僚が借りてきたアダルトビデオだった。
今回ばかりは俺様が完全に迂闊だった。
合鍵を渡してはいるし、勝手に家でくつろいでいることに関しては想定内だった。が、まさか同僚がDVDプレイヤーの中にディスクを入れっぱなしにしていたとは思っていなかったし、そもそもまだこの家にDVDがあったことにも驚いたし、何より普段DVDなんて見ない名前ちゃんがDVDプレイヤーを触るなんて思ってもみなかった。
「佐助さんがえっちなDVDを見るのは構いませんし、むしろ見てない方が不健全だと思いますけど、熟女モノってなんですか」
「それ同僚が借りてきたんだよー、俺様が熟女モノ見るわけないでしょ〜?」
「怪しいです。ほんとは年上のお姉さんと付き合いたいんでしょう?」
否定しても全く信じてもらえない。
一度そうだと思ったらなかなか意見を変えない名前ちゃんに少し手こずる。しかもこうなると少々面倒臭くなるのが名前ちゃんの悪いところだ。
「年下の私と付き合ってるのはカモフラージュなんですね、私のこと本当は好きじゃないんでしょう」
「そうじゃないって!」
数十分間、堂々巡りを繰り返しているうちにストレスが溜まってしまい、声を荒げてしまう。
気が付けば、怯えて泣いている名前ちゃんを組み敷いていた。
「あれは本当に同僚が借りてきて置いていったやつなの」
「……はい…」
「俺様は、本気で名前ちゃんのこと好きだよ」
「…疑って、ごめんなさい……」
やっと落ち着いてくれたようだった。
怖がらせてごめん、と謝り、泣き疲れた名前ちゃんをベッドに運び、添い寝をする。
普段は割と聞き分けのいい子なのに、何故あそこまで怒っていたのかが少し気になり、理由を尋ねると、名前ちゃんはぽつりぽつりと語り始めた。
「…コンプレックスを刺激されました」
「コンプレックス?」
「佐助さんとデートしてる時、妹と間違えられたりするじゃないですか」
「あー、たまにあるねぇ」
「どう頑張っても大人の女性になれないのに、佐助さんがそういうの見てるって思ったら…」
理由は、彼女らしくていじらしい理由だった。
俺様は愛されてるなー、なんて、瞼を腫らした愛しい名前ちゃんの前で思うのはいけないことかもしれないが、自然と笑みがこぼれてしまった。
「佐助さん何笑ってるんですか!」
「いやー、可愛いなあって思ってさ」
そう言ってやれば頬を染めながら、馬鹿とか変態とか呟きながら名前ちゃんは布団に潜っていった。
「大人になりたいとか気にしなくていいんだよ」
「む、無理です」
「名前ちゃん、夜はいつも大人の顔してるから大丈夫」
「〜〜〜っっ!佐助さんの変態!」
言葉のチョイスを間違えてしまったかもしれない。
くっそー、今夜はお預けかもなぁ、と思いながらも、愛しい名前ちゃんを抱きしめる手は緩めることはなかった。
この後美味しくいただきました