それは休みの前日に突然やってきた。蒸し暑い熱帯夜、深夜2時頃までビールを飲みながら録画していたドラマを消化し、キリのいいところで再生をやめ、そろそろ眠ろうとしている時に起こった。霊感はない方だと思っているが、生まれて初めて金縛りにあった。恐ろしいものが見えてしまうかもしれない恐怖から本能的に目を瞑ろうとするが体は言うことを聞かなかった。早く終われと祈り続けている時、リビングの方から何かが落ちてくる物音がした。その直後にひたひたと足音のようなものがこちらに向かって聞こえてくるのを感じた。嫌だ、まだ死にたくない。閉じない瞼から涙が流れる。そして、足音は部屋の前で止まった。

「開かない襖だと…」

それは、確かに子供の声だった。戸締りはしていたし外から入ってきたわけではないはず、そうなるとあの落下音はこの子ということになる…。
気がつけば金縛りは、もうすっかり解けていた。