改めてちらりと五条を見れば、以前一度行ったサイン会での容姿を思い出して確かに全く同じだと千寿は納得して更に顔を赤くする。
「じゃあ、私、ずっと本人にあんな会話を……は、恥ずかしい」
「えー?嬉しかったよ?僕の書いた話こんなに読み込んでくれてて」
「や、やめてください恥ずかしいです」
「照れちゃって可愛いなあ……で、君のほんとの名前は?あ、嫌だったら別に答えなくていいからね」
「えっと、真玉、千寿です」
「え、アカウントと同じなの?やめた方がいいよ、特定されちゃうから。それか閲覧制限かけた方がいいよー?」
「すみません、気をつけます」
つらつらと話を続ける五条に少し戸惑いながら答えていけば、先程注文したらしき大きなパフェと、千寿には紅茶が出された。
「あ、ありがとうございます」
「これくらい気にしないでよ。で、ここからが本題なんだけど」
大きな口でパフェを頬張りながら、五条はにこにこと千寿を見つめながら話を続けた。
「僕さ、今度恋愛ものを書くんだよね」
「え、き、聞いていいんですか、それ」
「必要な話だから、まあそのまま聞いてよ。でもほら、僕ってそういうジャンルの話書いたことないでしょ?そこで君に手伝って欲しくて」
びし、と指を指す仕草にどきりとしながら、千寿は話が見えずに首を傾げるばかりだった。
「知っての通り僕、エゴサーチ良くするんだけど、君を見つけてすごく僕の考えに近い感想をいつも書いてくれてるなーって。ついでに現役の女子大生ときた。君のこと観察してたら、いいネタ浮かびそうなんだよね」
「え……と、そんな事しなくても、五条先生はきっと素敵な話を書かれるのでは」
「えー、そんな事ないよ。それに僕個人としても君のこと興味があるからさ。勿論タダでなんて言わないよ、ちゃんとお金も出してあげる。いくら位がいい?バイトだと思って軽く考えて欲しいんだけど」
「え、あの、ええと」
突然の展開に戸惑えば、千寿は言葉が続かずに意味の無い声ばかりを出していく。
その様子をにこにことただ面白そうに見ながらパフェを食べていく五条に、ようやく千寿は一言答えた。
「……ご、ごめんなさい、無理です」
「お、やっぱり断るのかあ」
「へ?あ、あの」
「ああ、こっちの話。僕的には悪くないバイトの話だと思ったんだけどなあ……まだ信用されてない?」
「いえ!そんな、五条先生が本物なのは分かりました。でも、私にそんな責任のあるお話は受けられませんし……それに、私、少し前にバイトの面接をしたのでお手伝いはできないかと…」
「うーん、そっかあ……それは残念」
からん、とパフェ食べ終えた五条は頬杖をつきながら千寿の言葉に落胆したように肩を落とす。その様子に申し訳なさそうにする千寿に優しく声をかけた。
「ああ、気にしないで。半分僕のわがままだったしね!あ、でもこれからも僕とはたまにお話して欲しいかな、駄目?」
「えっと……五条先生が、良ければ」
「本当?ありがとう千寿」
ぱあ、と笑う五条につられて小さく笑みを浮かべながら、暫くして千寿は明日も講義があるからと店を後にして行った。
「あー、もしもし?僕だよ。そっちは元気にやってんの?へえ、相変わらずだね」
一人席に残った五条は、どこかへ電話をかければ楽しげに通話相手と話を始める。
「ちょっとお願いしたい事があるんだけどさあ……はぁ?いやいや昔言ってただろ、手伝ってやるからその代わりにオマエも手伝えよなって。結局何もせずに終わったんだ、今度はきっちり手伝って貰うからな」
数分言葉を交わして通話を終えた五条は、上機嫌な笑みを浮かべながら千寿の今までの投稿をじっと眺める。
「もう離す気はないからね、早く戻っておいでよ」