「ただいま!キィニチ」
「ああ、おかえり」
快く出迎えてくれたキィニチに笑顔でそう告げれば、同じように笑みを返してくれる。
机にドサドサと手に入れてきた土産の数々を並べながら、旅の思い出話を語って聞かせた。
「ナド・クライはどうだった」
「思ったよりも楽しかったよ!ナタとはやっぱり全然違うんだね。ほらこれ、向こうで採れるホワイトベリーでしょ、あとちょっと珍しい機械道具と……」
あれもこれも、と話す様子をキィニチは穏やかな顔で黙って聞いてくれている。
「あ、そうだ、今日キィニチの誕生日だよね?見てこれ、せっかくだから飴細工を貰ってきたの」
厳重に箱と氷を詰めたそれを見せれば、手に取ってまじまじと見つめている。
「凄いな、飴がこんな形になるのか」
「そう、大量に売ってるわけじゃないらしいから、これはキィニチだけの特別だよ」
「……悪いが、これはあとでアハウにやることにする」
「え、飴嫌いだった?」
「いや、そうじゃなくて……お前にお願いしたい事があるんだ」
「お願い?いいよ、今日は誕生日だからね。なんでも叶えるよ」
キィニチからの要望なんて珍しい、と二つ返事で了承すれば、そっと机の上の手が重ねられる。
「もう、何処にも行かないでくれ」
「……え?」
「お前がナド・クライに旅に出ると聞いた時、正直引き止めたいと思った。戻って来ると分かっていても、お前の居ない間、気が気じゃなかった」
ぎゅ、と重ねられた手に力が込められる。吸い込まれそうな虹彩をしたキィニチの瞳は、まっすぐこちらを見つめている。
「だから……もう、他の国になんて行かないでくれと言ったら、お前は叶えてくれるか」
ほんの少し沈黙が流れる。気まずそうに小さく息を吐いたキィニチは、握っていた手をそっと離そうとした。
「……悪い、困らせることを言った。忘れてくれ」
「いいよ」
「元々お前は度がしたいと言っていたんだから、無理な話──今、なんて」
「いいよって言ったの、もうナド・クライには行かないし、もちろん他の国にも行かない。ナタでキィニチと一緒に居るよ」
浮いたキィニチの手を今度はこちらがそっと握る。
予想していなかったように驚いた顔をする様子に、思わずくすりと笑みを零した。
「元々ナド・クライに行ったのは、キィニチに珍しいものプレゼントしたいからだよ。だからキィニチが嫌ならもう行かない」
誕生日おめでとう。そう口にすれば、少し視線を泳がせながら、小さく「ありがとう」と返ってきた。