「あつーい!流石に暑すぎる……つらい……だるい」
真上から降り注ぐ太陽の光が、じりじりと肌を焼いている感覚がする。
ちらりと隣へ視線を向ければ、呑気にジュースを飲み干している小さな姿を見つめる。
「アハウはさあ、燃素……なんだっけ?その姿」
「何だ急に」
「いや、ちょっと羨ましいなあって思って。燃素って事は暑さとか関係なさそうだし、というか風邪とかならなさそう」
「フン、人間どもは脆弱だからな」
「あれ、でもこの前調子悪くしてイファに診てもらってなかったっけ……」
「うっ、うるせえ!あんなヤブ医者、治療でもなんでもねえだろ!」
顔を赤く変化させながら怒るアハウを観察するように見つめれば、茹だる暑さのせいかぽつりと口から願望がこぼれ落ちた。
「でもいいなあ、生身の身体じゃなかったら気にしなくてもいい事たくさんありそう、羨ましい〜」
「……そんなに同じになりたいってんなら、叶えてやっても良いぜ」
「……え」
じ、と黒いサングラスは此方を見つめている。
普段と変わらぬ冗談だろうと思っているはずなのに、何だか目が離せない。
じわじわと、熱が内側の腹から、喉から、灼けるような熱さが広がっていく気がした。
──あ、多分、まちがえた。
◻︎
ふ、と意識が浮上する。
空模様は既に枯れ紫菖のような夜の色へ溶けていた。
「目が覚めたか?」
「キィニチ……」
「熱中症で倒れたんだ、覚えてるか」
差し出されたコップを受け取れば、中に入った水をゆっくりと飲み込んでいく。
「ごめん、迷惑かけちゃったね」
「礼ならアハウに言ってやれ、珍しくアイツが役に立った数少ない日だ」
相変わらずの言葉に、思わずくすりと笑ってしまう。
そうして意識を手放す前の事を思い出して、無意識に自分の手は確かめるように腹を撫でていく。
「どうした?まだ調子が悪いのか」
「う、ううん!大丈夫!」
あれはきっと、熱に浮かされた幻だったのだろう。
まだ少し、じんわりと熱を帯びるそれを忘れるように、そう思うことにした。