「何よそれ！ 二人共……！」
「諦めなさい……男ってこういう生き物よ……」
「んもーっ じゃあルフィを止めなきゃ！」
ナミの焦った甲高い声を聴きながら、フォクシー海賊団と名乗る一行とのやり取りを横目にリタはふわぁと大あくびをした。
勝手に自滅していった海賊船をやり過ごすと、到着した島は人工物ひとつない大草原であった。
島の全貌を見た瞬間にリタは焦った。次の島で降ろしてもらう約束をしたものの、陸路も人も街もないこの島では泥棒家業もできそうにないからだ。
せめて列車とか交通機関のある島までは乗せてもらうことを交渉しようと言い出そうとした瞬間、ルフィたちは「島だー！」と言って上陸してしまった。
「おい何やってんだよ、リタも行こう！」
と言われてしまえば、苦笑しつつもひとまず上陸するしかなかった。
竹馬から十年間降りられなかったおじいさんと出会ったり、彼との再会を果たした馬が撃たれたりとなかなかに色濃い出来事が上陸数十分の間に起きた。
馬を狙撃したフォクシーという男から売られた喧嘩を買うと言うことで話がついたそうだ。
ナミとウソップは最後まで反対していたようだが、この一味では仕方ないだろとリタは内心笑っていた。
「ねぇ、リタ！ あんたはどうしたいのよ！」
騒動の途中、ナミがリタの意見を求めたが、
「いやいや、オレに聴くなよ」
とリタは笑って受け流した。
（海賊のプライドだかデイビーバックファイトだかなんだかしらねぇが、そもそもオレ海賊じゃないし）
そんなことを考えながら、リタはまた眠そうにあくびを溢した。
（「仲間でもないオレの意見なんてねぇ」）
（傍観者を決め込む彼の物言いに、彼に尋ねたナミだけでなく一味の何人もが胡乱な目を向けた）