はじまりの狂騒歌_1

少女はある日突然、見覚えがあるようでない街に立っていた。
ふと気付いたら。前触れさえなかった。彼女はいつも通り、…そう、いつも通り過ごしていただけだ。
そこがどこかもわからないまま周りを見渡せば、道を闊歩する異形の生き物たちが視界に映った。これまでを平凡に生きて来た少女にとって、こんな状況は初めてだ。まるで百鬼夜行のド真ん中に放り込まれたような感覚にすら襲われる。
こちらから見る限り人間にしか見えないような生き物でさえ、今の彼女には話しかける勇気も沸かなかった。
元々肝が据わっているわけでもないのだ、出来ることと言えばもう泣き出しそうなのを堪えてその場を右往左往することくらいだろう。
次の瞬間、真横の銀行らしき建物が爆発した。
お世辞にも大柄とは言えないその体は、何が起こったかも理解出来ないままいとも容易く爆風に巻き込まれて吹き飛ばされてしまった。
少女は何とか受け身をとってその場に転がる。身体の至る所が地味に痛い。身体の痛みでようやく今自分の身に何が起こったのかを理解する。
その瞬間、最早我慢も出来なくなったのか、涙がぼろぼろと溢れ出した。今までの人生、事件や事故とは無関係に生きてきた少女にこの事件は、理解の範疇をゆうに超える出来事だった。
回りくどい言い方をせず、正直な言い方をするなら、…キャパオーバーだった。
実際に耳にしたことなどなかった銃声が聞こえ、肺に煙が流れ込み、最早走って逃げる気力などそこには無い。少女はただその場でうずくまって耳を塞ぎ、「夢なら覚めて」と願う事しかできなかった。

_____その時、誰かに腕を引かれた。

引かれるままに顔を上げた先には見覚えのある表情、髪、声。
どこからどう見てもあの、ダニエル・ロウそのものだった。混乱で脳内が真っ白になってる中、何度も聞いたあの声で「バカヤロウ!ンなところで何してんだ!」と、叫ばれる。

これが春秋あきにとって、すべての始まりだった。