愛の起源


 貴方は私の半身ではない。ならば当然、私も貴方の半身ではないのだ。既に貴方は自身の半身と共にある。
 遥か昔。神々が腑分けたその切り口に、ぴったりと沿う形がすぐそばに。最早何方を羨んでいるのかも分からない。ただ私は、その魂の形を"美しい"と思った。
 自身の片割れと共に在る姿がこれ程に美しいのなら、人が自身の片割れを切望することもきっと自然の摂理なのだろう。
「…私の半分のオレンジ」
 人は、ひとつに戻る為に身体を交えるのだという。その言葉が正しいのなら、私たちが互い求め、身を寄せ合う行為にはなんの意味もない。
 形の合わない半分ずつの果実を合わせるようなその行為は、きっと神々からすれば滑稽で見るに堪えないのだろう。
――隣で眠る貴方の指に触れる。
 貴方が私の片割れでないとして、何の問題があるのだろうか。こんなにも惹かれるこの感情が、いつか嘘になるとでも言うのだろうか。否。いつだって嘘を吐くのは過去ではない。嘘を吐くのは、今と未来だけだ。常に過去は私達に誠実でいる。良くも、悪くも。
かつてふたつあったはずの心臓は、今やひとつとなり貴方の中で跳ねている。
 どれだけの気持ちを向けたとて溶け合わないこの指先が、私達にとって恋の末路だ。

(私の中にオレンジがあるのなら、その断面はとうに腐り果てている。)