幸せの便り 4


ブルマがその体の変化に気付いたのはそれから約二ヶ月後の事だった。
あの日、ベジータが自分の子供を産んでいいと言った日からそれまで以上に彼と何度も何度も体を重ねた。
彼が言ったとおり彼は一度も避妊をしなかった。
それが何故だかブルマには嬉しく思えた。
今まで見えてこなかった未来が見えてきたような気がしたからだ。
もしかしたら結婚は出来ないかもしれない。悟空とは違って彼には戸籍がないから。
でも作ろうと思えば作れるかもしれない。
世の中には何かの事情で戸籍が無かった人でも戸籍を作れる方法があるみたいだと父さんが誰かから聞いたと話していた。
絶対だとは言い切れないらしいけど…。試してみる価値は有ると思う。
だけど今はまだ急ぐ事はないかなと思う。
何故なら彼にはまだ、しなければならないことがあるから。
だから全てが終わって彼が無事に彼女のところまで帰って来てくれる日まで待とうと思う。

ブルマは自分の部屋の机の椅子に腰掛けた。
赤ん坊が生まれたら友達に頼りを送ろう。きっとみんな驚くことだろう。
結婚のお知らせをすっ飛ばしていきなり出産報告なんてどうなってるんだ!と思われるかもしれない。
でも別にいいかと思う。
私は今まで常識外れな体験をいっぱいしてきたのだ。
今更世の中の枠にはまった生き方など出来るはずがない。
それでも幸せなのだと今ならそう思える。

「調子はどうだ?」
ドアを開け部屋に入ってきたベジータに彼女は答える。
「順調よ」
でもちょっと重くなってきたかな?
ブルマはお腹に目をやりそこを撫でた。
ベジータはそれには全く目をくれずベッドにどさりと腰を下ろした。
彼はまだ実感がわかないらしい。男性は皆そうなのだろうか?
でも例えベジータだけなのだとしても、もう気にはならない。
だって、彼のそういうところも含めて大好きなのだから。

…。
………。
「……………。」
見られている…。とブルマは彼の視線を感じ溜息を吐いた。
幸せの中にも困ったことが一つだけあった。
最近はこの言葉を口にするのがとても辛い。
「そんな目で私を見ても駄目よ。出来ないの」
「ほぉ。そんな目とはどんな目だ?」
「可愛い可愛い私の肌が恋しくて夜も眠れませんって顔よ」
「なっ!?ば、馬鹿野郎!」
「野郎じゃないわよ」
顔を真っ赤にする彼に彼女はクスクスと笑う。
だけど正直、自分もベジータの肌が恋しい…。
「そうだ!毎晩一緒に裸で眠れば良いのよ!そうすればお互いの肌を感じられるわ」
グッドアイディ〜ア!アンタもそう思うでしょ?と彼に首を傾げてみせる。
「阿呆ぬかせ。風邪引いて死んでも知らんぞ」
彼は首を横に振った。そう、そうよね。子供がいるんだもんね…。
風邪なんか引いたら大変だ。死にはしないとは思うけど、でも絶対とは言い切れない。
ブルマはがっくりと肩を落とした。
「だが、毎晩一緒に眠るという案は悪くないな。俺はお前と違って寝相も悪くないし危険もないだろう」
「えっ本気?」
体を重ねもしないのに一緒に眠ってくれるなんて。彼がそんなことを言い出すとは思わなかった。
だから彼女はびっくりして彼に聞き返してしまった。
「ああ。本気だとも」
「……。」
口の端を上げてニヤリと笑ったベジータにブルマは嫌な予感がした。
もしかしたら何か別の対処法を見つけたのかもしれない…。
でも…。
「じゃあ、ベジータの荷物もここに運ばなきゃね」
お手伝いはできないけど。
「頑張ってね。」
「お、おい」
手を引いてベッドから彼を立ち上がらせると、ハイハイ行った行ったと彼を廊下に放り出した。
そしてまたクスクスと笑う。

私は間違いなく今幸せだ。だけど、私は欲深いのだ。
気難しくて照れ屋な恋人と数ヶ月後には生まれる我が子。
三人一緒の未来を必ずこの手に掴んでみせる。
そしたらその時はこれ以上ないくらい幸せの便りをみんなに送ろう。

「別に便りは結婚や出産の時だけって決まってないものね!」


おわり



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