綺麗なものしか知らない殿下の話


奴隷の刻印。無数の傷跡。

いるんですよ、殿下。汚い人間なんていくらでも。ううん、汚くなんかない。普通の人間でしたよ。みんな。だから、普通の人間だから、誰も私を助けなかったんです。あの惨劇の中で、薄汚い見知らぬ子どもが襲われてたって、そりゃあ見て見ぬ振りですよ。自分の身が第一なんです、普通の人間は。王族でも貴族でもない、ただの平民の子どもなんて、誰が命を賭して助けるんですか。自分も殺されかねない状況で、わざわざ助けに入る人間なんかいない。


なーんちゃって!
ただの戦闘で作った傷ですよ、このご時世、戦場に出ていた者ならこんな傷いくらでもあるでしょう。
お前は、嘘が下手だな。俺の周りは正直者ばかりだ。無理して笑うな。もう笑わなくていいんだ。すまない。
殿下、謝らないでください。本当に、この傷は大したものではなくて。
守ってやれず、すまない。

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