煉獄さん
「ん」
ふと目が覚めて感じたのは、大好きな彼の匂いと、それから煙草の香り。すぐそばにある温もりに擦り寄ると、ん?と彼がこっちを向いた。
「起きたか」
「…んん」
よしよしと頭を撫でられ、寝ぼけ眼で彼を見上げる。体を起こしていた彼は、さっきの香りに違わず煙草を咥えていた。指に挟んでにこりとこちらを見遣る姿は初めて見るもので、ぼんやりと口を開いた。
「煙草、」
「む?」
「吸うんですね…」
「ああ、日向の前で吸ったことはなかったな」
すまん、嫌だったかと黒い携帯灰皿で火を消した煉獄さんは体をシーツに戻す。
「初めて見ました…」
「普段はあまり吸わないようにしているんだ」
ちゅっと軽いキスが落とされる。タバコの香り。なんで?と聞くと少し困ったように笑う。 片腕を立てたままこちらを見つめてくる視線が優しい。
「我慢していると吸いたくなる」
「我慢?」
そうだ、と頷く。一体何を我慢しているというんだろう。今まで煉獄さんから煙草の香りしたことなどなかったし、失礼だがそんなになにかを我慢する人には見えない…けど。
「実のところ、もっと君を食いたいのだがな」
「え」
「無体を強くわけにはいかないからな。こうして我慢しているのだ!」
はははと笑う煉獄さんだが、待って、今なんだか凄いことを言わなかったか?
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