5-1
ダンテと暮らすようになって、前は分からなかったダンテの交友関係がだんだん見えてくるようになった。
「よおダンテ、珍しいなこんな時間に…おっと、そちらのお嬢さんは?」
「嫁だ」
「居候です」
品物を受け取りお金を渡す。物珍しげにわたしを見つめる青果ワゴンのおじさんにぺこりと頭を下げれば、意外そうに目を丸くした。
「ダンテのツレにしちゃあ礼儀正しいな。名前は?」
「日向です」
「日向…ふうん。ま、こんなやつが旦那だとあんたもいろいろ大変だろうが、よろしく頼むよ」
「旦那じゃないですけど」
「照れるなよ」
「照れてないよ」
むっとして見上げた先、満更でもなさそうな顔をしながら歩き出したダンテの後を追う。おまけだともらった林檎を早速齧っている。
その後も行く店行く店、道を歩いているだけでも、
「ダンテ、女の好み変わったのか?」
「ダンテってこんなお子様が好きだったの?ショックだわ」
「犯罪だぞダンテ。家に返してこいよ」
などなど。酷い言われようだ。
「東洋人は若くみられるだろ」
「それにしてもあの言われよう」
「まあ、そのうち慣れるさ」
慣れるかなあ。ダンテと行く先々で声をかけられるが、特に熱烈なのはセクシーな女性たちからのラブコール、もといわたしへの皮肉だ。お子様、ロリコン、ダンテの隠し子なんてのもあった。
「…ダンテ、いろんな人と関係があるんだね」
ぽつりと呟いた言葉にダンテはぐっと言葉に詰まる。
「まあな。でも悪い奴らじゃない」
「うん」
「多少口が悪いやつもいるが…っと」
と、言っている側から女の子に声をかけられた。派手なピンクのネオン、それに負けないくらい露出と主張の激しいスリットドレスを身に纏った女の子。甘えた声を出して猫のようにダンテにすり寄っている。
「ダンテ、今日はどう?」
「悪いな、予定があるんだ」
「えーまさかそのコ?ダンテがキッズにお熱ってほんとだったんだ」
「なんだって?」
「あーあ、あたしの方が絶対イイ思いさせてあげられるのにぃ。ロリコン直ったらいつでも来てね、また仲良くしましょ」
突っ立ったままのわたしをちらりと一瞥してから、女の子はダンテのほっぺにちゅっとキスを一つ。ダンテも慣れた様子でひらりと手を振る。
やれやれ、なんだかなあ。内心肩をすくめて歩き出すと、すぐにダンテが後を追ってきた。
「おい、置いていくなよ」
「話したいことありそうだから」
「なに?」
「仲良しなんでしょ」
「あれは…男なら当然…いや仕方ないだろ」
「そうだね」
「いっとくが、ご無沙汰だからな。お前が起きてからは行ってない」
「へえ」
「…なあ、おい。日向」
「なに?」
「だから…怒るなよ」
「怒ってないよ」
なんだか変わっちゃったなあと思っただけ。隣をついてくるダンテが困ったように頭をかいた。
「変わった?俺が?」
「うん」
「どこが」
「前は一緒に歩いててもこんなこと言われなかったでしょ」
18年も経ってるんだから当たり前だけど、少し寂しいような、悲しいような。
「俺が色男に成長して寂しくなった?」
「うん」
「そうか…って、…本気か?」
置いてかれたのはわたしの方だ。隣にいるダンテは確かにダンテだけど、昔とは違う。周りの人も、物もそうだ。やっぱりどこか一人ぼっちだなあと思うことがある。
「ダンテッ誰なのその女!」
「ん?」
振り返った先、またしても露出高めなブロンド美女。相当怒ってるようだ。
「ちょっとっ答えなさいよ!」
「俺の女だ」
「だから」
「いいから話あわせろ」
「ダン…」
「ちょっと何コソコソしてるわけ!?離れてったら!」
ぐいっと割行ってくるが、ダンテはわたしの腕をしっかと握り離さない。
「妻に乱暴な真似しないでくれ」
「妻?」
「日向」
「えっあっあー…」
「妻ですって?このちんちくりんが?」
かちんときた。
「行こう、ダンテ」
「いっぱい甘やかしてやるから」
「いいよ、今まで通りで」
「遠慮すんな。あんたより年上になれたこと、俺は嬉しいんだぜ」
ぐしゃぐしゃと髪を撫でられる。