4-1
「さあて、日向、行くぞ」
いつもの赤いコートとリベリオンを手にした彼。読んでいた雑誌から顔を上げると、ハンガーラックにかけられていたわたしのコートまで手に持っている。
「えっわたしも?」
「当たり前だろ」
「でも、ダンテ一人で十分じゃない?」
先日かかってきた合言葉付きの電話で、依頼人の話はわたしもなんとなく聞いていた。森に出るというゴーストの退治。話を聞くにそこまで強力な悪魔ではないだろうに、どうしてわたしまで。
「寂しいだろ」
「寂しい?」
ぴっと指をさされる。わたしが?
「日向にベッドで枕を濡らすような真似はさせないさ」
「わたし寂しくて枕濡らしたことあったかなあ…」
「とにかく、行くぞ。1人より2人だろ」
ダンテの場合1人で2人どころか、10人いやそれ以上の力を持っているんだからわたし1人が増えたところで大して変わらないと思うんだけど。
早く支度しろと急かされとりあえず必要なものを手に取ると、ぐいと手を引かれる。そのまま事務所の外に連れ出され、ガチャリと扉に鍵をかけたダンテは繋いだ手をそのままに歩き出した。ひやりと冷たい風が頬を撫でる。
「なんでわたしも行くの?」
「だから、寂しがるだろ」
「そうかなあ…」
たしかに1人の事務所は少し寂しいかもしれないけれど、元々18年前は一人暮らししてたわけだし、今更寂しくなるかな。いつのまにかダンテが持っていたわたしのマフラーを受け取って、くるくると首元に巻きつける。今日は冷えるって言ってたっけ、夜は温かいスープでも作ろうと思っていたんだけど、今日のご飯はどこで取ることになるのかなあ。
駅まで来ると、ダンテから渡されたチケットの目的地がかなり遠方のものだとわかった。
「遠いね」
「まあな」
「帰るの遅くなるね」
「そうだな」
なんとなく適当な返事に、何故だか機嫌の良さそうなダンテの様子に疑問符を浮かべながら汽車に乗り込む。汽車に乗ってからもどこか上機嫌で鼻歌でも歌い出しそうな雰囲気だ。…なんなんだろう。
「それで浮かれてたの?」
「失礼なやつだな。当たり前だろ」
「だってただの依頼だよ」
「違う、旅行だ」
本物のゴーストツアーなんてとんだ旅行もあったものだ。普通の女の子なら泣くか叫ぶか、ほっぺ引っ叩いてさようならコースもあり得るだろう。