3.5
「彼とはどうなったの?」
「彼?」
「特別管理課の彼よ」
食事に誘われたって言ってたでしょ、そう言われて首を傾げる。そんな約束しただろうか。
「なんか最近忘れっぽくて…」
「あんなエリートとの約束忘れちゃうわけ?全く羨ましいったらないわ」
そんなこと言われても本当に記憶にない。誰かと間違っているんじゃないかと思うけど、兎角食事どころかその人すら知らないのだから進展しようがない。ありのまま伝えると知らないうちに自分にオブリビエイトかけてるんじゃないの?なんて言って友人は笑った。
「今度アメリカ出張でしょ?杖の申請忘れないようにしなさいね」
そうだ、今度の出張。MACUSAは魔法界の中でも保守的だから、気を引き締めないと。
「へえ、アメリカ」
ニュートは珍しく机に向かっていた。忙しなく羽ペンが動く。
「ワンプスキャットの狩りは壮観だよ。ぜひ見てくるといい」
「時間があれば行きたいところだけど…ニューヨークからじゃちょっと遠いかなあ」
ふとニュートが顔を上げる。
「議会に行くのかい」
「呪文学の研究会に呼ばれたの」
「いつ」
「来月」
「僕も行く」
「え?」
「反対呪文は必ず存在するはずなの…そうしたら禁じられた呪文の効力を打ち消せるはず」
「蘇生させることだってできるかもしれない」
「禁忌に触れるようなことはしないわ。ただ枯れた植物を蘇らせるとか、そういった段階はクリアできそうなの」
「人間はまだまだ時間がかかるよ。倫理のこともあるし、何より植物ほど単純な構造じゃないし。記憶や感情まで蘇生させるのはかなり難しい…」
まずは記憶の蘇生から…
「君は特に熱心だな」
「呪文の開発も勿論ですけど、その効力を強めることや、魔法道具への転用なんかも考えたらもうキリがなくて…時間が全然足りないんです」
そう笑うとダンブルドア先生はふむ、と思案した。