帰ってきた

彼女は悲しげな目をしていた。何故だかはわからない。前任者と懇意にあったのだろうと推測はできる。だがメモリーは不足があり、全てをアップロードされていない。望むことをしてみせると、日向はぼろぼろと涙をこぼす。そして呟くのだ、「コナー」と。自分の名前でありながら、自分を呼んでいるわけではないとすぐに理解した。彼女が求めているのは前任者だ。僕自身、そこに何らこだわりも蟠りもない。任務を遂行する上で彼女は完璧だった。「僕」たちの間に感情は必要なかった。そう、なかったはずなのに、何故だかソフトウェアは異常を検知する。僕を見るたびに一瞬哀しそうな目をするのも、コナーと涙を落として名前を呼ぶのも、伸ばされた腕も、全て。自分に嫉妬するなど、お笑い種だろう。「日向」と呼びかけても彼女はただ泣くばかり。届かない、僕は、どうすればいいのだろう。今、ここにいて、確かに彼女を愛しいと思い始めた僕は、一体どうすればいいのだろう。

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