ティーダに勝ったソラと、砂浜の上で集めた材料の在庫を確認する。
「丸太が一本足りないね」
「島じゅう探したと思ったんだけどな」
頭をかくソラと共に唸る。丸太は一番使う材料だし、リクもたくさん集めたはず。もう遊び場の周囲にはないのかもしれない。
ぐるりと周囲を見回して視界に丸太がひっかからないか探してみると、遠目に銀髪の後姿を見つけた。
「あっ、リクだ」
「ん?」
薄木の桟橋でつながれた、ちょっとした離れ島。真横に生えているパオプの木の上で、リクが海を眺めている。
「リクなら、丸太がたくさんある場所を知っているかも」
「えー? そんなこと聞いたら、絶対からかわれるって」
リクに頼ることに気乗りしないのか、ソラが唇をとがらせ不満顔をした。けれども嫌ではないようなので、材料を抱えなおし小屋を経由して小島へ向かう。
小島からは、海を挟んで本島が見える。こちらがやって来たのことにはとっくに気がついているだろうに、リクは海風に髪を遊ばせたまま、海を見つめ続けていた。その視線は本島よりももっと遠く、果てしなく遠くに向けられているように感じられる。どうしてだろうか。なぜか、そのままリクが遠くに行ってしまうような不安を覚え、こちらを向いてほしくて、いつもより大きめな声で彼を呼んだ。
「リク!」
「……フィリアか。ソラの材料集めを手伝ってるのか」
余裕げな笑みを浮かべ、やっとリクがこちらを見た。ソラがムムッと半眼になったことには気づかないフリをして話を進める。
「そう。でもね、丸太がまだ足りないの。リク。丸太がある場所、どこか知らない?」
「知らなかったら、別にいいけど……」
ブツブツとソラが付け足すのにかまわず、リクがそっと近くの木の下を指差した。そこには、ちょうど一本、ほどよい大きさの丸太が落ちている。
「あ、あった!」
「これで足りるか?」
「うん。ばっちり。ありがとう、リク!」
「あっ、フィリア。それ、重いから俺が持つよ」
代わりにソラからロープを預かった。
せっせと材料を持ち構えている間に、リクはまた海へ視線を戻していた。寂しい気持ちが蘇る。
「リクは、もう材料探し終わったの?」
「俺の分なら、もう全部カイリに渡してある」
「ふーん。でもさ、そんなに海ばっかり見て、飽きないのか?」
ソラの質問に、リクはニヤリとした笑みを返した。
「ああ、ちょっと飽きてきたかもな。どうだい、ソラ。ひとつ、腕だめししてみるか? 相手になるぜ」
リクはこの島の子どもたちの中で一番強いらしい。先日は、ティーダ、ワッカ、セルフィの三人がかりに軽々と勝利を収めていた姿を目撃した。
「リクと勝負するとまたカイリに怒られる……かもだけど」
ソラが拾い上げたばかりの丸太を地面に戻す。代わりに握り締めたのはまたあの木剣。
「よし、やろう!」
「そうこなくっちゃな。今日こそ決着をつけてやる!」
チャンバラは苦手だ。友達を殴ることも殴られることも怖いと思ったからだ。けれど、観戦するのは好きかもしれない。特にソラとリクの組み合わせは、ざわざわと熱いなにかが奥底からこみ上げてくるような、不思議な気持ちにさせられる。
「フィリア、そこじゃ危ないから下がってろよ」
「あ……うん」
リクに声をかけられて、桟橋の方へノロノロ避けた。先ほどより日が熱くなっている。ソラと木剣を取り出すリクの姿がジリジリと霞み、ぼやけて、他の人の姿に見える気がした。眩暈? 脱水しないよう気をつけなければ。日よけになるかと、持っていた白布をフードのようにかぶってみた。
ソラが構え、リクは木剣を余裕たっぷりに手で遊ばせた。
「二人とも、ケガしないでね」
「させないよう、せいぜい気をつけるさ」
「なんだよ、もう! それは俺のセリフだって!」
ソラはすごく真剣で、リクはとても楽しそう。もしチャンバラが得意だったら、自分も二人と楽しめていただろうか。でも、だめだ。そんなことをしたら、きっと叱られてしまう。
「──誰、に?」
「行くぞッ!」
無意識への疑問は、威勢の良いリクの掛け声でかき消された。