余裕ぶった顔したリクが高くジャンプし、一瞬で背後に現れる。慌てて距離を取りながら、木剣を思い切り振り上げた。木剣同士派手にぶつかり、手が痺れ、後ろへよろける。
「ととっ……」
「甘いぞ、ソラ」
先に体勢を整えたリクが木剣を斜めに振り下ろしてきた。避けきれず、ポカリとされる。
「まだまだだな」
「いってぇ〜、やったな!」
ジンジンする頭を撫で、リク目がけて木剣を振り下ろす──も、サラリと避けられ、また殴られる。悔しい! ムキになって木剣を大きく振り回してみるも、リクにちょっぴりも当たらなかった。
「どこ狙ってるんだ?」
「う、うるさいな!」
くすくすと笑う余裕ぶった態度が気に食わない。リクはいつもそうだ。昔はとっても優しかったのに! 今でも自分以外の人間には親切なのに!
力任せに突き進む。ガツガツ木剣がぶつかって、やっといくつか手ごたえはあったものの、こちらの方が殴られた回数は多かった。
ぜぇぜぇ息があがったとき、リクがおもむろに木剣を横に構え、空いた手で手招きした。思わず足を止め警戒する。
「かかってこいよ」
あからさまな挑発、罠、そんな単語が過ぎっても、立ち向かわないでいれば「怖いのか?」と言われそうな気がする。俺は臆病者じゃないぞ! 正面から突っ込んで、防御を崩せずカウンターをくらう。
「どうしたソラ、もう終わりか?」
「言ったな!」
やけっぱちになりながら攻めた。勢いに圧し勝ち、リクが下がる、下がる、よろけて転げた、足をそろえ、背を丸めてバネのように──しまっ……。
「がっ……!」
胸元に衝撃、息がつまり、気がつけば空を見上げていた。
「ソラ!」
フィリアの声が聞こえた瞬間、ざっぱんと海中に落ちた。場外に出された。リクの勝ちだ!
海面から梯子を使い這い上がると、リクがフィリアから白布を取り外し、こちらに投げよこした。
「これで俺の50勝49敗だな。ちゃんと体は拭いとけよ。暖かくても風邪引くぞ」
「くそ〜っ、やっと昨日引き分けに持ち込んだのに……!」
先に50勝されてしまった。カウントを数え始める前の勝敗も加えれば、圧倒的にリクの方が白星が多い事実は無視だ。
「もうそろそろ夕方か。早くカイリに材料を渡しに行けよ。明日にはイカダを完成させるんだからな」
リクはフィリアからロープを取り、丸太をひとつ持って、「先に行ってるぞ」なんて、さっさとカイリの待つ方へ歩き出してしまった。フィリアはその背と自分を見比べオロオロしている。
ちぇっ、なんだよ。リクったらカッコつけてさ。
ありがとうと素直に言えないのも、これ以上フィリアに困り顔で見られるのも嫌で、白布に乱暴に水分を押し付けると、残りの丸太を持って、フィリアと共にリクを追った。