一人ずつ箱を抱え、胸を張って法廷に戻ってきた。
「証拠を見つけてきました!」
声高らかに宣言すると、そこにいた全員がこちらを向く。ハートの2が赤い槍を握りしめソラの目の前までやって来た。
「裁判を再開するか?」
「もちろん!」
「よろしい。裁判を再開する。弁護人は前へ!」
代表者としてソラだけが席へ通され、こちらは拝聴席で見守ることとなる。女王が身を乗り出した。
「では、おまえたちが集めた証拠品を見せてもらおうか」
提出した箱を兵士たちが一つずつ中央に並べ終えると、女王は口をへの字に曲げる。
「ふん、数だけはそろえたようだね。でも私が集めさせた証拠品にくらべたら、ガラクタ同然さ。おまえたち! 私の正しさを証明する品を持っておいで!」
トランプ兵が四つと同じような箱を一つ急いで持ってきたが、慌てすぎたせいで転んでしまった。それに女王がムッとしていたけれど、彼は慌てて並べ直し女王に何か言われる前にそそくさと退散した。残ったのは五つの箱。
「女王の箱には何が入っているんだろう?」
「うーん……やっぱりアリスを有罪にする証拠じゃないかなぁ?」
グーフィーの推察を聞いて心配になる。結局、判決を下すのはあの女王である。裁判官が検事を兼ねているところでおかしな裁判、ちゃんと集めた証拠を見てもらえるのか心配になった。
「あの女王の用意したものなんて、いい加減なものに決まってるよ!」
幸いなことに、ドナルドの声はあちらまで届いていないらしい。女王は並べられた証拠品を見て顔をしかめソラに錫杖の先を向けた。
「五つもあるのかい……全部調べるのはめんどうだね。ひとつあればじゅうぶんさ。おい、おまえ!この中からひとつだけ、これだ! という証拠をお選び。その証拠をもとに、犯人が誰なのか私が決めるよ!」
「なんだよ、せっかく集めたのに!」
「私のやり方に逆らう気かい!? なら、おまえも有罪だよ!」
ぐっ、と言葉を飲み込んだソラがチラリとこちらを見てくる。ドナルドは女王の横柄さに怒って杖を振り上げ、それをグーフィーが抑えていたので自分が頷き従うように促した。
「さあ、証拠品を選ぶんだよ!」
「じゃあ……ソレ」
ソラがしぶしぶ真ん中のを指差した。
「その品でまちがいないね? やりなおしはできないよ」
「わかってる。これに決めた!」
すると、ソラに選ばれなかった箱たちは開封前にすべてさっさと下げられてしまった。全員の視線がひとつの箱に注がれる。
「これを開けば犯人がわかる。さあ、真犯人は誰だろうね?」
私たちの集めた証拠でありますように。祈るような気持ちのなか、ついにトランプ兵が箱に手をかける。蓋が開いた一瞬、幻のように浮かんだのはすぐ隣に立つふたり――。
「えぇえっ!?」
信じられなくて大声を出してしまった。突如、地面から鉄柵がいくつも生えてきてドナルドとグーフィーをそれぞれ閉じ込める檻になる。
「ドナルド、グーフィー!」
檻を引っ張ってみるが頑丈で、素手で解除は無理だ。
助けを呼ぼうとソラの方へ振り向けば、ほくそ笑む女王も視界に入った。
「なんと! おまえたちが犯人だったのか!」
「ちょっと待って! こんなハズじゃなかったんだけど……」
ソラが弁解しようと試みたが、もはや聞く耳を持つ気は無いようだ。傍に控えていたトランプ兵へ早口に命令する。
「アリスともども有罪と決まった! この者どもをひっとらえよ!」
「何やってんだよ、ソラ!」
柵の中でドナルドが怒鳴る。グーフィーは頬を困ったように掻いていた。
「仕方ない! こうなったら強行突破だ!」
「あくまでこの私に逆らうつもりだね。おまえたち、被告人を逃がすんじゃないよ!」
ソラがキーブレードを構えたのを見て女王が指示を出すと、たちまち裁判所の中央に歯車のついた小さな塔が現れた。スペードの10が操作すればアリスの入った鳥籠ははるか高くに上げられて、分厚いカーテンまで引かれてしまう。
「かかれ!」
女王が裁判所じゅうに響き渡る大声で命令した。