ピノキオを連れてゼペットの元に戻った時には、ゼペットはグミブロックを組みたてて、緊急脱出用の小さなグミシップを作り上げていた。脱出の方法もクジラのお腹の中で暴れてクシャミさせるという奇抜な作戦を発案して――かくしてそれは成功した。
 ぶえくしゅっ! おじさんみたいにクシャミしたクジラから放り出された衝撃は想像以上にすさまじく、ゼペットとピノキオたちが乗ったグミシップは脱出の瞬間にはぐれ、見えなくなってしまった。
 全員なかなか笑顔を作れなくて、しょぼしょぼ運転の沈黙の中、次なる世界へとグミシップは進む。

「ピノキオとゼペットじいさん、大丈夫かなぁ……」
「どこかにたどりつけてればいいけど……」

 グーフィーがぽつりと言って、ドナルドが答えた。ジミニーが「無事だと信じよう」と答えながら旅の記録をつけている。

「…………リク……」

 運転しているソラがとても小さな声で呟いたのを聞き逃さなかった。けれど、なんて声をかけたらいいかわからない。
 自分が気絶している間にリクが言ったこと、やったことをソラたちから聞いた。
 「心を無くした者を復活させる」、「カイリを助ける鍵」、「カイリを一緒に助けよう」……。
 自分から見たリクは、とても器用で賢く優しい人だ。しょっちゅうソラをからかっているが、故郷で困っている人を助けている姿は何度も見たし、島のみんなから愛されていた。その彼が人を傷つけても平気だと言うなんてとても信じられなかった。
 離れていた間にリクに何があったのか。何がリクをそうさせているのか。カイリはどんな状態なのか。想像はすればするほど悪い方へと転がってゆく。
――自分は間違っていたのかもしれない。
 リクとカイリと再会したらソラを助けてもらおうと思っていた。けれど、助けが必要なのはリクたちの方だったのかもしれない。
 そして、誰かを助けるためには、自分の問題だけに振り回されていちゃだめだとも。
 無理やりにでも笑顔をつくれば、グミシップの速度があがる。
 とにかく強くなろうと思った。どんなハートレスに狙われても己で退けられるように。

 



★ ★ ★




 闇の世界に堕ちてから、どれだけ時が過ぎたのか。
 右手に師の形見のキーブレードを、左手に友との繋がりを握りしめ、果てのない闇の中を延々とさ迷い続けている。
 休む間もなく襲ってくる闇たちを無感情に斬り捨てる。鎧を失ったいま、いくら闇を払おうと徐々に蝕まれているような錯覚に怯えていた。自分を繋ぎとめているものがなければ、もっと早くにあっさりと諦めて闇に溶けていたかもしれない。
 寂しくてたまらなく、懐かしい日々への恋しさが募る――光あふれ輝いていた故郷。師に見守られ友と励んだ修行の日々。純白の蓮の花。みんなで見上げたあの満天の星空。

「あ――」

 こころが弱くなる瞬間をつけ入るように、足を止めうつむいた時ほど幻が見える。今回はフィリアだった。進む方向の少し離れた先に彼女の後ろ姿が見えた。
 どうせいつもの消えてしまう幻だとわかっていても、やはりすぐに追いかけてしまう。会いたい――会いたい!

「フィリア!」

 いつもは動きもしない幻が、今回は振り向いた。瞳は何も見えていないのか虚空を見つめている。なんとなく触れたら消えてしまう気がして数歩の距離で足をとめた。

「フィリア。あなたなの?」
「――私を呼んでいるの?」
「聞こえているの? フィリア!」
「……だれ……?」
「フィリア!」

 フィリアの姿が輝く粒子となって消えてしまう。アッと手を伸ばしたが、もう何もつかめなかった。





 To be continue... 






R3.1.30

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