大きな盾で道を塞ごうとしてくるディフェンダーを押しのけ、ドナルドとグーフィーを先頭に大広間を脱出する。トロッコ乗場から礼拝堂、また高楼と、たたみかけるように襲いかかってくるハートレスたちからカイリを守りながら入り組む通路を走り抜けた。
上空から食らいついてこようとするワイバーンを躱し、やっとの思いで見上げた空は黒雲で埋めつくされようとしていて、もともと薄暗かった日の光はどんどん細くなってゆく。
「これは……この世界が闇に覆われようとしているの?」
不気味な雰囲気に思わず繋いでいたカイリの手を握る力を強めると、カイリからの力も強まる。怯えきったカイリと視線を交わした時、自分が怖がっていたら彼女を守れないのだと勇気をふり絞り、奥歯をぎっとかみしめた。
「トロッコだ!」
大紋壁へたどり着くと、鳥かごのような乗り物を指してドナルドが叫んだ。不思議な力で動く頑丈そうなトロッコは、この城の入口方面へ繋がっているらしい。
まっさきにドナルド、続いてグーフィーが乗り込んだ。自分もカイリと共に乗ろうとしたとき、通路からハートレスたちが溢れる音がする。おびただしい数が逃がすものかとこちらを見つめて追いかけてきており、無数の金の目が星空のようだ。
ドナルドがグワワワワッ! と悲鳴をあげた。
「もう追ってきたぞ!」
「フィリア、カイリ。早くぅ!」
グーフィーに急かされたカイリがトロッコに片足を入れるのを見たとき、疑問が浮かんだ。
トロッコはどこまで安全? 動いている最中にハートレスに襲われたらどうなる? もし墜落してしまったら──?
「フィリア?」
自分が動かないので、カイリがいぶかしげに振り向いてくる。
カイリを守るために自分ができる一番のことが何か、分かっているつもりだ。
「フィリア、どうしたの?」
焦れたカイリから、繋いだ手を僅かに引かれる。不安に揺れるカイリの海色の瞳に、穏やかに笑う自分の顔が映った。
「私は、ここでハートレスを食い止める」
「えっ?」
「みんな、できるだけ早く逃げて。絶対に戻ってきちゃダメ」
「フィリア、何を言って──こっちへ来て!」
カイリが手を引いてきた。それを「ごめん」と振り払えば、カイリがバランスを崩してトロッコの中へよろける。それをグーフィーが支えるのを横目にトロッコのスイッチへファイアを放つと、装置が反応してトロッコの出入り口を閉じ動き始めた。
「そんな!」
「無茶だよ!」
「トロッコを止めろ!」
ドタバタ音がするが、一度動き出したら止まらないらしいトロッコは、ゆっくりと線路に従い進んでゆく。
ここで自分がハートレスたちを引き付ければ、トロッコが無事に城の入り口へ着く確率はグッと高まるはずだ。
カイリがトロッコの隙間から手を伸ばしている。
「だめ、フィリア!」
「ドナルド、グーフィー。カイリをおねがい!」
トロッコに襲いかかろうとしたワイバーンへサンダガを落とすと、こちらに向かって飛んできた。踵を返し、追いかけてきたハートレスの群れに飛び込んでゆく。