背後の影に攻撃も守りもすべて任せ、アンセム本人は余裕ぶって腕を組んだ状態で戦闘が始まった。
影が放ってくる斬撃を避けつつ接近し殴りつける。ドナルドが魔法を、グーフィーが盾を、自分もキーブレードをアンセムに叩きつける。
「私を守るのだ!」
背後の男が両手を広げてアンセムの前に出た。影に当てたはずが、まるで岩壁のように攻撃が弾かれてしまう。
だけど、この程度でこっちだって怯むものか。
「みんな、いくよ!」
この旅で、命をかけて戦ってきた。連携はバッチリ。あえて三人バラバラに攻撃したり、ドナルドが魔法で目くらまし、グーフィーが守って、キーブレードで隙を付く作戦も上手くいき、腹を打たれたアンセムが「なにぃ!」と顔を歪ませた。
「まだまだ!」
続けて、ホロウバスティオンで出会った魔法石、ムーシューを召喚する。彼は召喚中にピョコンと頭に乗ってくる赤いウロコの小さなドラゴンで、ちょっとお調子者な顔をしている。
「ムーシュー、頼む」
ひとつひとつは小さいが、威力はバツグン。ムーシューの吐く火炎玉、フレアブレスは雨あられのようにアンセムに殺到した。影の裏に隠れているだけではこの炎たちからは身を守りきれないだろう。
「ありがとう!」
あっという間にムーシューの召喚時間が終わり、ドナルドとグーフィーが復活する。火だるまになっていたアンセムは、辛くもバリアで堪えたようだ。白い服のあちこちが焦げていた。
「どんなもんだい!」
「……フン」
三人で得意げな顔をしていると、腹を押さえていたアンセムがニヤッと笑い、島の奥へ飛んで行ってしまった。
「逃げる気かな?」
「追いかけよう!」
グーフィー、ドナルドの発言を聞く前に追いかける。
アンセムが逃げこんだのは、砂浜がビニールのようにビリビリに裂けて、闇色の断面がむき出しになったような場所だった。
「待て!」
砂浜からひょいと飛び越えてその場所に降り立つと、待ち受けていたのはアンセムではなく、ダークサイドだった。初めは夢で、次はこの世界が闇に堕ちる瞬間に戦った因縁のある相手。
ふと、ドナルドとグーフィーが側にいないことに気がついた。リクの体を乗っ取ったアンセムと戦った時と同じ。透明な壁で弾き出され、分断されたようだ。
幸いなことに、ダークサイドの弱点や行動パターンは前2回とさほど変わらなかった。ノロマなダークサイドをあっさり倒すと、アンセムが偉そうな態度で再登場する。
とっさにドナルドとグーフィーたちへ視線を送ると、未だ壁は解けていないようだ。
ひとりでやるしかない。
「風よ!」
いつもフィリアにかけてもらったエアロガを自分でかける。魔力負担が大きいが、回復薬に余裕はあるのでケチらず使う。
地走り衝撃波を横に移動して回避する。
「フィリアはどこだ。リクを返せ!」
キーブレードを振るいながら、怒りのままアンセムへ訊ねた。影に守られながら、アンセムはニヤニヤ笑う。
「フィリアはすでに私のもの。それに、この少年の心は闇に帰ったと言ったはずだが?」
「そんなこと、信じるもんか!」
キーブレードを躱したアンセムが、フンと笑う。
「伝わってくるぞ、おまえの怯えが。絶望が!」
影が殴りかかってくる間、アンセムが誘惑するように囁いてくる。
「本当は怖いのだろう?」
闇のオーラを纏って突進してきたところを、キーブレードで受け止め、よろけつつも反撃する。
「俺の友だちを返せ!」
可能な限り打ちのめすと、アンセムが舌打ちした。
「闇に沈め!」
場に暗黒のオーラが満ち、地中に潜った影が襲いかかってくる。全てドッヂロールで回避し、終いに放たれた光の波は頬をかすめたが、臆せずつっこみ、ラストアルカナムでとどめを刺した。