カイリが無事で、本当に良かった。
ソラがひとり、カイリのもとへ走ってゆく背を想像していたよりも冷静に見ていた。
「アンセムを倒したから、世界が元に戻ろうとしているのかな」
グーフィーの呟きに、ここがディスティニーアイランドが蘇る場所で、だからカイリがここへ引っ張られてきたのだと理解する。それと同時に、どうやら自分たちはその枠から除外されているらしいことも察する。
「フィリア、大丈夫?」
「立てそう?」
ソラがカイリと話している間、ドナルドとグーフィーから心配してもらい、ふたりから視線ごと気持ちを逸らした。まだ胸が痛み、泣きたくもなったけれど、自分と出会う前からカイリはソラが好きで、ソラはカイリが好きだったから──これで良かったのだと何度も頭の中で唱えた。
情けなくも、大ケガをしたわけではないのにまだ立つこともできなそうだ。
「ダメみたい。ぜんぜん力が入らないの」
「じゃあ、僕がおぶってあげるよ」
「ありがとう」
グーフィーの申し出にありがたく甘え、背負ってもらって顔を伏せる。ぎゅうと目を瞑ると、あたたかい他人の体温にちょっと泣いた。
世界再生開始の時間はすぐにきた。地が揺れて、闇に奪われたものが還ってくる。
カイリが立つ砂浜と、ソラのいる白黒の道が断裂した。世界が再生してゆく。悪い夢から覚めるように、まるで何事もなかったかのように、自分たち以外が元通りに──。
ひときわ眩しい光が起きて思わず目を瞑る。次に目を開いたときにはカイリの姿もディスティニーアイランドも見えなくなっていて、どこかも分からない青空の下、緑に挟まれたあぜ道の中にいた。
★ ★ ★
穏やかな波音が続く砂浜に寝転び、青空を見上げていた。
「きれい──」
ずっと闇の中で、よどんだ曇り空や暗い夜空ばかりだったから、陽の光をあびる穏やかな時間は本当に久しぶりだ。
雲が急速に動き、青空が夕焼けへ、星空へと変わってゆく。愛しい日々の思い出がこみ上げてくる。
「星空──」
試験までには間に合わせようと、隙間の時間を見つけては一生懸命作って、それでも何個か失敗して、上手くできたお守りを大好きな親友に渡したあの日。みんなで見上げて、笑って、ずっと当たり前に続くと信じていた。
「テラ──ヴェン──フィリア──」
幻でもいいから、いまは会いたい気分だった。
「また一人か──」
その時、星空から光の粒子が雪のように降ってくる。
「よかった。世界が再生するのね──」
どうやらミッキーたちは使命を果たしてくれたようだ。
砂浜、植物、海、空、闇側にあった全てのものが、光の側へと返還されてゆく。一方、もともと闇側にいた自分だけは、器用に闇に残される。
身体を支えるものが失われ、闇の世界に沈みはじめる。またひとりで闇の中に落ちてゆく。しかし、今回は前とは違う。
「鍵が導く心のままに──」
もし自力で闇から抜け出せなかったとしても、ミッキーは自分がここにいることを知ったし、彼ならまた見つけに来てくれる。助けに来てくれる。きっとまた再会できる。
「私は、ここにいる」