メテオが消えると、フィリアがくったり床に座り込んだ。また魔力を全部使い切ってしまったらしい。今は自分が側にいるからいいけれど、危ない戦い方だなと思う。
「フィリア」
「思ったんだけどね」
側に行くと、フィリアは荒い呼吸を繰り返しながら真剣な表情で言った。
「必殺技と合体技って、組み合わせられるんじゃないかなって……」
「…………次は、一緒に試してみようか」
第一声がそれかと、少し脱力。
目の前に生きものが降りてきた。無事だったようだが、この部屋に来た時のように激しい唸り声を上げ続けている。まだ暴れ足りないという感じだった。
「やめろ、もう終わったんだ! ──うわっ!?」
落ち着かせるため生きものの肩を掴んだら、信じられないほどの力で振り払われて床に倒れた。
「ヴェン、だいじょうぶ!?」
「どうしちゃったんだよ!?」
大きな声で生きものに訊ねると、彼は耳を垂れさせて、ポケットから何かを取り出した。それは初めて会ったとき、彼が大切に持っていた繋がりのお守り──の、無残な姿。
「そっか。それ、壊れちゃったのか」
生きものが悲しそうに鳴く。
気の毒だけれど、ここまでバラバラになってしまったら修復は難しいだろう。
「……お守りと一緒に、絆も壊れちゃったんじゃないかって思ったの?」
フィリアが訊ねると、生きものがもう一度鳴く。
自分も同じお守りを持っているので、そう考えてしまう気持ちはよく分かる。でも。
「だいじょうぶだよ! 絆は形じゃないんだ」
「──ィズナ、ダイジョ──ブ──?」
「うん!」
強く頷くと、安心したのか、生きものの耳がピョッコリ上がった。
「フン。意味もわからず言ってるだけだ」
とても低い声が、馬鹿にしたように笑う。機関室の入口に、この世界で一番最初に会ったあの巨大な男が立っていた。
男は光線銃をこちらに向けたまま、ゆっくりと近寄ってくる。
「どうしてそんなことを言うの?」
フィリアの批難を含んだ質問に、男はもう一度鼻を鳴らした。
「『どうして』だと? おまえたちも見ただろう。あれがそいつの本性だ。破壊するだけの生きものだ」
男の悪意に満ちた言葉に腹がたつ。もし本当にそんな存在だったなら、壊れたお守りにあんなに心を痛めたりなんてしないはずだ。
「そんな事ない! 俺たちを助けてくれたんだ!」
「そいつは欠陥品だそうだ。おかしな行動をするのもそのせいだろう」
「……ひどい」
フィリアも男を睨みつけた。珍しく、彼女も相当頭にきているようだ。
「ヴェン──##NAME2##──ィズナ!」
「うん。俺たちは友達だ!」
フィリアも、大きく頷いた。
「ならば友達同士、仲良く処分されるんだな」
男の光線銃にかけられた指に、ぐっと力が込められる。しかし光線が発射される前に、生きものが男の顔面に飛びかかった。
「な、やめろぉっ!」
生きものを振り払おうともがいた男が、バランスを崩して床に倒れる。無事着地した生きものは、こちらを向いて「逃げよう」と鳴いた。
「おう! フィリア、行くよ!」
「え、きゃっ!?」
未だ座ったままのフィリアを横抱きにして、生きものと一緒に走り出す。触れた感触が柔らかいとか、いい香りがするだとか、胸の奥がムズムズするような気持ちが湧き上がってきたけれど、今はそんなことに気を取られている場合じゃない。
走り出すと、フィリアが足をジタバタさせた。
「ヴェン! 私、自分で立てるから」
「立てたとしても、まだ走れないだろ?」
「でも、あの……重」
「舌噛んじゃうよ。おとなしくして」
人ひとり抱えて走るのは大変だけれど、今はあの男に追いつかれる前に逃げないと。
「非常警報だ。奴らを捕まえろ! 絶対に逃すな!」
背後から、男の怒声が追いかけてきた。