今年もまた / 七瀬遙

「はる〜!迎えにきちゃった!」

ガラガラガラっと玄関の扉を開き声をかけるが返事がない。
あれ?と思いお邪魔しますと控えめに言い中へ入る。

ちゃぷんっ

静かな家の中に響く水の音。
ゆうはお風呂場へ行き扉を開ける。

「…はる、いるの?」

「……まだ約束の時間じゃないはずだが」

「楽しみすぎて居ても立っても居られないから迎えにきちゃったの」

はぁ、と溜息をつき立ち上がる遙。
反射的にゆうは目元を手で隠す。
そしてそっと指を開いて間から遙の方を見る。

「…なんで水着着て湯船に浸かってるわけ」

「何だって、落ち着く」

「落ち着くってあんたね…いいから早く支度して行こうよ」



ーーーー…。


わたしたちはあれから高校を卒業して大学生になった。
わたしは地元の大学、遙は東京の大学に行ってしまい離れ離れになってしまった。

けど連絡は取ってるしわたしはたまに会いに行く。
遙も長期休みの時は帰ってくるしもう完全に会えないわけではないから寂しくない。

世間は夏休みに入り、更に賑やかだ。
今日は遙が帰省してくる日。

だから去年と同じ場所へ行きたくて駅へと迎えに行った。
また今年も遙と一緒にあの場所へ行きたかった。


ーー駅のホーム、帰省してきた学生がたくさん電車から降りてくる。
その中から遙を見つけるためゆうは辺りを見回す。

「……ゆう、どうしてここに」

後ろから声をかけられ少しびっくりし、すぐに後ろを振り向くとそこには待っていた人物が立っていた。

「どうしてって、はるにすぐ会いたかったから」

ゆうは遙の腕を引き駅を出る。
そのまま2人は歩いてある場所へと向かう。

「おい、そんなに急いでどこに…ってこの道、」

「分かった?どうせその下に水着着てるんでしょ?」

半ば引っ張られながら歩く遙は辺りを見て自分がどこに連れて行かれるのかを悟った。


「……はい、着きました。遙の大好きなプールだよ」

「たしかお前、泳げないんじゃなかったのか?去年あんなに練習までしたのに」

「だ〜か〜ら、今年もまたはるに泳ぎを教えてもらおうと思ったの!」

「俺は教えるのが得意じゃない。真琴にでも頼めばいい」

「真琴は確かに教えるのが上手だけどさ〜!今日ははると泳ぎたいの!」

遙は立ち止まってキョトンとした顔をするがまたすぐに歩き出す。

「…サバで手を打つ」

「はいはい、分かったよ。うんと美味しいサバ料理作ってあげるから」

そう言うと遙の目はキラキラと輝きを見せ、遙は更衣室へと向かった。

「ほんと、わたしはいつサバに勝てるのかな」


そう呟いて更衣室へとわたしも向かった。